大川内:そうです。大学院時代に、文化人類学をビジネスに応用する実践がアメリカで盛んなことを知りました。そしてそれを日本でも社会に応用したいと考え、現在のアイデアファンドを立ち上げました。
窪田:日本では具体的にどういった活動をされているのですか?
大川内:例えば企業の工場を対象とした調査であれば、会議室で話を聞くだけではなく、実際に現場に入り、プレス機の音が響く中で、人がどう動き、誰と声を掛け合い、上からの指示をどう受け止めているのかを見ていきます。あるいは会社の外にも目を向けて、その地域の特色と勤め先での仕事、家族との暮らしなどがどのように結びついているのかを、日々の生活の中で理解していきます。
「ジャングルへ飛び込む」人がいるかどうか
窪田:私が文化人類学の力を強く意識したのは、10年ほど前に飛行機で出会ったフランス人のデザイナーの話です。彼は自動車メーカーのルノーで、車ではなく、文化人類学者として、組織やプロセスをデザインしていると言っていました。
大川内:その方は具体的にどんなアプローチをされていたのでしょうか?
窪田:日本とフランスのエンジニア同士が共同開発を進めるなかで、両者の話がなかなか噛み合わない状況があったそうなのです。そこで彼は、元々住んでいた高級マンションを出て、日産・座間工場の社員寮に移り住んだそうです。
大川内:社員の方々と生活を共にしたのですね。
窪田:そうです。共同のお風呂に入り、毎日同じ食事をして、年単位で暮らしたそうです。当初は「外資の手下が、誰の首を切るか見に来たのではないか」と警戒されていたようですが、それでも時間をかけ、一緒に生活する中で、日本のエンジニアが何を大事にしているのかを学んだそうです。
大川内:年単位とはすごいですね。なかなかできることではないと思います。
窪田:本当ですよね。彼は、日本とフランスの違いを「ジャングルの向こうにある金をどう取りに行くか」というたとえで説明していました。日本のチームは、多くの人がリスクを洗い出し、時間をかけて安全で強固な道をつくろうとする。
一方でフランス側には、すぐジャングルへ飛び込む人もいれば、少人数で別の方法を試す人もいる。効率はよくなくても、まったく別の解決策を見つける人が出てくる、というのです。



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