こんなエピソードもある。
あるとき、京都での案内を終え、一行とともに伊丹空港へ向かった。増田さんの担当は空港まで。一行はそこから沖縄へ向かう予定だった。ところが、VIPラウンジで出発を待っていると、プリンセスから突然こう尋ねられた。
「あなたも沖縄に来るのでしょう?」
行程には入っていないと伝えると、「それでは困る。航空券を買ってきて」と言われた。増田さんは、その日のうちに帰宅する予定だったため、すでに荷物を京都から自宅へ送ってしまっていた。着替えも化粧道具もない。
事情を伝えると、プリンセスから返ってきたのは「買って」の一言だった。突然すぎる要望にも動じず、増田さんはホテルの売店で必要なものをそろえ、そのまま沖縄に同行したという。
プロフェッショナリズムの原点は…
VVIPの細かなこだわりや要望は、時に「わがまま」と捉えられがちだ。しかし、増田さんの見方は異なる。
「基本的には、訪れる地域や文化を深くリスペクトしてくださる方ばかりです」
サウジアラビアのプリンセスは、いつも別れ際に「恵美に会えなくなるのが寂しい」と涙を流すという。
なぜ、増田さんが選ばれるのか。その理由は、ストレスを感じさせない配慮にあるようだ。
「どこへ行くか以上に、いつもの暮らしが日本でもストレスなく流れ、居心地よく1日を終えられるよう時間をデザインすることを重視しています」
増田さんのプロフェッショナリズムの原点は20代の頃にある。ロンドン・パリを巡るグループツアーを担当したとき、1人参加の80代女性と出会った。理由を尋ねると、「夫が亡くなり、ようやく気持ちが落ち着いた。ずっとやりたかった旅に挑戦してみようと思った」とのこと。
当時の増田さんは、「この人は、人生でもう一度ここへ来られるだろうか」と考えた。


※ログイン後、コメント入力が可能です。