そんな増田さんによれば、VVIPの旅行は一般的な観光とは事情が大きく異なる。来日して話して初めて、「実はこれがしたかった」が出てくることが多いという。そんなときは、予定をゼロから組み替える。
「お客様のご趣味やご関心に合わせて、行程や時間配分を整えます。その方にとって心地よい一日を実現するために、どういう移動手段なら一番早いのか、何時間かかるのか。その中から最善の方法を一緒に選んで、実現していく感じですね」
求められるのは、観光知識だけではなく、状況に応じて判断し、柔軟に対応する力だ。それを象徴するような出来事がある。
アメリカからプライベートジェットで訪れた、世界的な小売企業の一家を担当したときのことだ。荷物の中には、ご主人愛用の約400万円の自転車もあった。「絶対に壊さず運んでほしい」と念を押された直後、ハイヤーの中で飛んできたのが冒頭のリクエストである。
「多摩でサイクリングをしたいんだけど、ヘリコプターを手配してくれる?」
猶予は3日。高級自転車を積めるヘリを探し出せ
難題に拍車をかけたのは、VVIP本人自身がヘリの操縦資格を持つエキスパートだったことだ。
「『この機体なら自転車も載るはずだよね?』と専門知識込みで言われたら、引き受けるしか道はありません」
残された猶予は、週末を入れてわずか3日。宿泊先ホテルのバトラーとタッグを組み、裏で必死にヘリを探し、飛行ルートの確保に奔走。だが表舞台では、焦りの色ひとつ見せずに笑顔でガイドを続けた。
「上野の不忍池でお子さんたちと穏やかにスワンボートを漕ぐ姿を見守りつつ、ヘリ手配のことで頭はフル回転でした(笑)」
当初、VVIPが希望していたのは、多摩でのサイクリングだった。しかし、多摩にはヘリポートがなく、ヘリで向かうのは難しい。そこで増田さんは、すぐに別の選択肢を提示した。


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