95年11月リリースの竹内まりやの楽曲『今夜はHearty Party』には「キムタクさえも かすむような男」という歌詞が登場する。『ロングバケーション』のヒットも、バラエティ番組『SMAP×SMAP』(どちらもフジテレビ系、96年)も始まっていない時点で、「キムタク現象」は既に起こっていたのだ。
その後もキムタク現象は続き、彼のお気に入りの「goro’s(ゴローズ)」や「クロムハーツ」のアクセサリー、ドラマ『HERO』(01年、フジテレビ系)で着用した「A BATHING APE」の茶色のダウンジャケットなどに憧れ、小遣いをためて買った覚えのある人も多いだろう。
私の友人は、『ロングバケーション』に憧れ、スーパーボールを購入していた。そういった小さなアイテムまで、キムタクが関わればとにかく売れた。
商品が売り切れるだけではなく、CMポスターは盗難の被害が深刻に。即座に剥がされて盗まれるため、ポスターを見張るためだけの警備員が配置されたというからすごい。
景気低迷期、木村拓哉は進路や夢を提示してくれるヒーローだった
ファッション業界はもちろんだが、むしろ彼が世の中を変えたのは、若者に「仕事」への夢を与えたこと。つまりリクルート市場に与えた影響である。
『Beautiful Life〜ふたりでいた日々〜』(00年、TBS系)では彼が演じたことで美容師の志願者が急増。『HERO』では検察官(検事)、『GOOD LUCK!!』(03年、TBS系)ではパイロット(舞台となったANA〈全日本空輸〉の株価まで上昇した)が人気職種となった。そのほか、アイスホッケー選手にレーサー、調理師、ピアニスト……。
つまり、木村拓哉の人気の軸となっているのは、「働く姿を演じるのが抜群にうまい」という点にあるのだろう。大ヒット作を改めて観返すと、、恋愛シーンより、むしろ彼が努力と熱意で仕事を頑張り、周りを幸せにするシーンがとても魅力的に感じる。
特に90年代後半から平成中期の景気低迷期、「ワーキングプア(働く貧困層)」という言葉が生まれるほど暗かった中、木村拓哉は、見失いがちだった進路や夢を提示してくれるヒーローだったのではなかろうか。


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