思い起こせば2018年の中間選挙において、もう一人のテキサス州選出の共和党上院議員、テッド・クルーズが民主党新人ベト・オルークに2.6%差まで追い込まれるという椿事(ちんじ)があった。エネルギッシュな雄弁候補者の登場により、「すわ、あのテキサスで民主党が勝つかも?」と騒がれたものだ。
しかるにオルーク人気はその後、失速する。一躍、「民主党のスター」となったことで、オルーク氏は銃規制や気候変動問題などで民主党中枢の主張にすり寄ったのだ。すると、「アイツ、ちょっと違うんじゃないか」「ここはカリフォルニアやニューヨークじゃないんだぜ」などと州内の支持者が離れていったのである。
その点、タラリコ氏は最初から「全国区」を目指さない。むしろ「自分はテキサス人」であることを強調する。おそらくはオルーク氏の挑戦を、「他山の石」としているのであろう。そして「貧困層に所得を再配分せよ」と訴えるのではなく、「神は貧しい人を大切にせよと言っている」と説くのである。
もはや「単なる50州の1つではない」テキサス州を制する意味とは
もう少し長い目で見ると、今回の選挙の重要性が浮かび上がってくる。テキサス州は単なる「50州の1つ」ではない。人口は3100万人で、面積は日本の1.8倍。GDPは2.9兆ドルでカリフォルニア州に次ぎ、独立すれば世界第8位――フランスよりは小さいが、カナダよりも大きい――という途方もない規模を誇る。
しかも近年は名だたる大企業が、本社をテキサス州に移転させている。テスラやオラクル、ヒューレット・パッカードなどだ。サムスン電子やトヨタ自動車も、北米本社をテキサスに移動させている。空港や港湾などのインフラに恵まれ、生活コストが安く、州所得税がなく、ビジネスにフレンドリーである。だからカリフォルニア州などからの移住者が増えている。
それにつれて、政治風土も少しずつ中道寄りになってきた。いや、かつてのテキサス州は、リンドン・ジョンソン大統領やロイド・ベンツェン上院議員(クリントン政権で財務長官を務めた)など、民主党の大物議員を輩出したお土地柄なのである。今のようなレッドステーツになったのは、意外に新しくて1990年代以降のことなのだ。
逆に共和党の内部にも一種の対立がある。もともとお父さんブッシュ(G・H・W・ブッシュ)がテキサス州に居た頃は、エクソン(現エクソンモービル)やシェブロン、ハリバートンなどの本社が集まる国際石油メジャーの本拠地であった。当然のことながら、当時の共和党は自由貿易、同盟重視、そして移民に寛容なプロ・ビジネスの政党であった。


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