メアリー=クレア・キングの科学者としての歩みをかんたんに見てきたが、ぼくは彼女の社会貢献する姿勢に非常に感銘を受ける。だがそれ以上に心を動かされるのは、キングの科学者としての姿勢だ。それには2つある。
信念を貫き通し、進取の精神を持っていた
1つは信念を持ち続けることの重要性。遺伝性乳がんという概念を提唱して16年間、彼女は学会で誰にも相手にされなかった。正しいと思うことを貫き通し、研究を続ける姿勢は尊敬に値する。この不遇の時代に耐え抜いたことが乳がん遺伝子への到達につながったのだと思う。
もう1つは進取の精神である。キングは人類遺伝学者だった。ほとんどの研究者は自分のテリトリーに入ったままで、そこから外へ飛び出すことはしない。
80年代というのは分子生物学という学問が始まったばかりだった。その領域に足を踏み入れるのには勇気がいる。だが、キングは時代の流れを読んだ。これからの研究は分子生物学を使わないと進まない。
キングには未来を見る目があった。そういうメアリー=クレア・キングをぼくは尊敬する。
ぼくは大学病院にいたとき、多くの尊敬できる人に出会えて幸せだった。開業医になってもキングの姿勢を手本にしていきたいと思っている。


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