しかし、現状で日本の「新幹線輸出」の可能性としてありうるのは、このような「高速鉄道」の輸出であろう。新幹線とは、いわば超ガラパゴス化した日本独自のシステムである。車両のみならず、信号・保安装置、運行システム、軌道、電力、それにメンテナンスに至るまで独自の仕様で固められており、一つでも欠ければ「新幹線」は成立しない。
日本人は、新幹線を神格化されたような存在として捉える節がある。しかし新幹線は、実際には万能とは正反対の独自規格だ。日本のように通勤路線並みの稠密ダイヤで走らせるシステムが求められることはほとんどない。単に高速性や安全性を求めるだけならば、より汎用性があり安価な他国の技術で十分である。
真っ向勝負では勝ち目がないからこそ、日本政府は円借款スキームを活用した、いわゆる護送船団方式での新幹線輸出を推し進めてきた。安倍政権下、オールジャパンの掛け声のもと始まった日本の鉄道インフラ輸出だが、「オールジャパン」ゆえの機能不全は各地のプロジェクトで露呈している。
「新幹線輸出」難航のインド
今やオールジャパンの声は上がらず、都市鉄道の分野ではコアとなる部分に日本の技術を導入する「コアジャパン」に軌道修正されている。しかし、新幹線輸出にコアジャパンは通用しない。インド高速鉄道の事例がまさにそれを物語っている。
インド高速鉄道は、2015年12月の安倍・モディ両首相の日印首脳会談において、ムンバイ―アーメダバード間高速鉄道に関する協力覚書が署名され、日本の新幹線をそのまま輸出することを前提としてスタートした。2017年から2023年にかけて5回、合計で約7500億円を上限とする円借款貸付契約が結ばれている。総費用の8割が円借款で賄われる予定であった。
調達条件は日本タイド(入札を日系企業に限定)で、土木・軌道・電力、そして信号や車両等の調達、およびコンサルティングサービスが実施されている。なお、土木部分は、コスト圧縮のため、現地への技術支援のみを行い、インド企業が受注している。しかし、7月の高市首相のインド訪問に伴う共同声明の内容からしても、「新幹線」がインドの地を走ることはないことはほぼ目に見えている。

