オーストラリアでは今年2月、政府傘下のオーストラリア高速鉄道局(HSRA)が事業計画を公表した。第1フェーズとしてシドニー―ニューカッスル間(約191km)を整備し、同区間を最高時速320km、約1時間で結ぶ計画だ。
総工費は900億オーストラリアドル(約9兆9750億円)程度で、官民連携(PPP)方式での資金調達が検討されている。本案件はODAスキームのような政府間契約にはならないとみられ、今後の着工に向けてはHSRAが全世界の企業に向けて公平な国際入札を行うことになる。つまり、高速鉄道の技術を持つヨーロッパ、そして中国企業とガチンコの勝負となる。「ひも付き」ODA以上の厳しい価格勝負だ。一部では日本の新幹線が有利と報じられてもいるが、その根拠がどこにあるのかは大いに疑問を抱くところである。
HSRAは8月に高速鉄道開発に向けた事前フェーズのパートナー選定を発表し、車両調達、システム設計、車両基地や運行管理センター整備などの「上もの」部分に対して、フランスのアルストム、ドイツのシーメンスをそれぞれ筆頭とするJV(共同企業体)、そして日立レールSTSオーストラリアの3社が最終候補として残った。事前フェーズでは、ルート設計や費用対効果など実現可能性を調査し、上記3社は、車両や運行システムを提案する。この結果から、2年後をメドに最終的な事業化を判断する。
日系メーカーでも「新幹線」とは限らない
この3社の中に、日系メーカーが1社入ったのは朗報だろう。ただ、だからといって新幹線が輸出されると考えるのは早計である。新幹線技術はJR各社が保有しており、メーカー単独で日本の新幹線システム一式を輸出することは基本的に不可能だ。これまで、各国への新幹線輸出案件のコンソーシアムにJRが加わっていたのはそのためである。また、日立レールは欧州メーカーの買収を重ねて成り立っており、欧州の高速鉄道車両を手がけている。
よって、本体着工時に日立レールが受注したとしても、いずれかのJRが加わらなければ、それは「新幹線」ではなく、あくまでも「高速鉄道」だ。ひいきなしの国際入札の場で、全てを日本仕様で固めた提案は価格からして勝負にならず、現実的ではないといえる。コアな部分に日本の技術が採用されたとしても、車両もシステムも新幹線とは異なる高速鉄道に仕上がることが予想される。

