同国では先行して、バンコク―ノンカイルートの建設が進んでいる。ノンカイから先、中国・ラオス鉄道経由で中国本土と接続するという前提があることから、こちらは中国支援の中国規格である。第1フェーズのバンコク―ナコンラチャシマ間(約250km)が早ければ2030年にも開業予定で、チェンマイルートの着工はこれを見据えたものとみられる。
ノンカイルートに対し、バンコク―チェンマイルートは、その先の延伸計画のない「どん詰まり」路線である。そのため、日本政府は同ルートに対して2015年頃からセールスをかけており、JICAによるフィージビリティスタディ(F/S)も実施された。国土交通省とタイ運輸省との間には複数回の覚書が結ばれた。インドネシア、インドに次ぐ新幹線輸出先としての有力候補として、安倍政権下ではトップセールスが繰り広げられていた。
とはいえ、このプロジェクトもそう簡単に「新幹線」を輸出できる案件ではないということは、あまり知られていない。
「中国規格」と共用区間はどうする?
実はこの路線、バンコク近郊のアユタヤまでの区間は、先に中国規格で建設が進むノンカイルートと線路を共用する予定だ。バンコク側のターミナルも、円借款で建設されたバンスー(クルンテープ・アピヤッド)駅として、共用を前提に2023年に完成している。
二重投資を覚悟でそれぞれを別線にするという方法もあるが、路線ごとに駅が違うのは利用者にとって不便である。現実的には、もし新幹線システムを導入するのなら、中国規格区間とも互換性を持つようカスタマイズしない限り、実現困難なプロジェクトであるといえる。
タイではこのほか、東部に延びるドンムアン―スワンナプーム―ウタパオの3空港接続ルート、そしてマレーシアと接続する南ルートの高速鉄道計画もある。いずれも、着工済みの路線に接続するため、互換性のある中国規格ないしは欧州規格が想定されている。
もしチェンマイルートに新幹線システムを導入するとしても、共用区間があるならば新幹線技術を開示し、どこまで国際規格に対応させるか、そしてそのコストアップ分も考慮していかなければ、スキームそのものが破綻するという一種の「爆弾」を抱えている。

