慶応義塾大学の島津明人教授(臨床心理学)は、静かな退職は複数の心理的プロセスを経て発生するとし、その1つとして「学習性無力感」を挙げている。
「ある行動を起こしても環境に何の変化も起きない。あるいは起こせない時に生じやすい。『頑張っても報われない』状況が長期間続くことで、無気力に陥る。頑張っても正当に評価されない。意見を述べても職場が変わらないといった経験が繰り返されると『何をしても結果は変わらない』ことを学習する。その結果、自発的な提案や、よりよい成果を目指すことをやめてしまう。無駄な努力をしないことがより適応的であると学習したためである」(『日本経済新聞』「経済教室」26年8月19日朝刊)。
頑張っても報われず、正当に評価されないといったことなど、役職定年者に共通する特徴を言い当てているのではないか。
役職定年の次に待ち受ける「再雇用」で一兵卒に
役職定年の次に待ち受けているのが60歳定年後の再雇用だ。法律で企業は希望者全員の65歳までの雇用確保義務がある。
定年年齢の引き上げを実施している企業は22.7%であるが、76.6%は継続雇用制度を導入(301人以上の企業)し、その大半が再雇用制度だ(厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」25年12月19日)。
再雇用になると、1年更新の有期雇用契約社員として一兵卒で働くことになる。
そして多くが年収も実質的に60歳時点の半分程度に一律に下がるうえ、管理職も役職を外れ、仕事の中身も現役社員のじゃまにならない程度の補助作業に従事しているのが一般的だ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。