個人情報保護委員会は、漏洩事案について一般への公表を一律の義務とはしていない。一方で、事案の内容に応じて、事実関係や再発防止策を速やかに公表することが望ましいとの考えも示している。今回のようなケースでは、その判断がとりわけ重要になる。
企業がセキュリティ事故の詳細をすぐ明らかにできないケースは確かにある。ランサムウェアや不正アクセスが続いている最中に、侵入口となったVPN装置や脆弱性、ネットワーク構成などを詳しく公表すれば、攻撃者を利する可能性がある。別の攻撃者が同じ弱点を狙うことも考えられる。そのため、調査や封じ込めが終わるまで詳細を伏せる判断には合理性がある。
しかし、今回のライザップ事案は事情が異なる。外部の攻撃者がシステムへ侵入したのではなく、社員自身が外部生成AIへデータを送信し、本人の申告で問題が判明した。
ライザップによれば、発覚後にはチャット履歴を削除し、生成AI事業者にも確認を行っている。少なくとも現在公開されている情報からは、対象総数や対象団体数を示すことによって、外部の攻撃者を利するような事情は確認できない。もちろん、調査や本人通知との調整など、別の理由があった可能性はある。しかし、それならその事情を説明すればよい。
「学習されなかった」だけで判断してよいのか
生成AIに個人情報を入力したという話になると、「AIが覚えてしまい、別の利用者への回答として出てくるのではないか」という不安が生じやすい。ただ、生成AIへ入力した情報が必ずモデルの学習に使われるわけではない。サービスの種類や契約、設定などによって扱いは異なる。
ライザップは、今回のデータについて、生成AI事業者以外の第三者に閲覧された可能性と、生成AIの学習に使われた可能性はないと説明している。データが24時間以内に削除されたことなどを根拠にしている。これは重要な確認である。ただし、それだけで話を終えることもできない。
9月3日のライザップの発表には、生成AIサービス事業者の役職員等が顧客情報を閲覧できる状態にあった可能性については、なお確認中だと記されている。そして9月8日を過ぎても、ライザップのお知らせ欄には本件の第2報は確認できない。


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