その林氏は総務相に就任して以来、公務での地方視察は25回、訪れたのは24道府県に及ぶ。これに併せて地方議員との意見交換なども熱心に行っており、党内では「総裁選の党員票獲得をにらんだ選挙運動」との見方が支配的だ。
林氏は昨年の総裁選において、1回目投票で高市首相を上回る72票の国会議員票を獲得したが、党員票が伸びず、小泉・高市両氏に次ぐ3位となり、決選投票に進めなかった。その反省から、地方を回って党員票を伸ばせば、勝負に持ち込めるとの計算があるとみられている。
加えて、林氏は国会議員との関係づくりにも積極的に取り組んでいる。旧岸田派でも多くのメンバーが「林氏は期別の会食を重ねている」と明かす。さらに、6月には旧二階派を中心としたグループを率いる武田良太元総務相とも会食するなど、「党内のシンパ拡大にも余念がない」(自民党長老)。
こうした林氏の一連の動きが、総裁再選を当面の最大目標とする高市首相が警戒するのは当然だ。しかも、林氏は財政規律重視の立場で、消費税減税など政策面では首相とかなり隔たりがある。
そうした中で、高市首相周辺は「林氏に要職に残ってもらえるよう努力するのは当たり前だ。最後は首相と林氏の直接の話し合いになる」と明言する。高市首相が林氏に要職を打診した際に「素直に受け入れて政権を支え続けるか、断って高市政権から距離を置くかの決断を迫る」(官邸筋)というわけだ。
林氏周辺には「要職を受けて存在感を示すべきだ」という声と、「自由な立場で地方を回るのが得策」という声が、相反する形で交錯している。その一方で「ポストにかかわらず、林氏の出馬の決意は変わらない」(閣僚経験者)との見方も少なくない。
試される「119番」からの脱皮
これまで3回、自民党総裁選に立候補している林氏。2012年には、参院議員として初めて立候補し、5人中最下位(安倍晋三元首相が選出)。石破茂前首相が選出され24年は、衆院議員として立候補し、9人中4位。そして、高市首相が選出された25年は5人中3位という結果だった。
林氏の「政治家としての生きざま」を見ると、「いつも誰かのリリーフやピンチヒッターでの要職就任が際立つ」(政治ジャーナリスト)。その点については、林氏自身も自らの生まれた「1月19日」に引っかけて、「政界の119番」を自認してきた。
ただ、政界関係者の多くは「国際的にも苦境にある日本を率いるトップリーダーは、リリーフやピンチヒッターでは務まらない」と指摘している。林氏にとって当面の最大の課題は「119番からの脱皮」ということになりそうだ。


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