問題はメーカーの判断だろう。付加価値を積み上げて利益を追求すると、利益率の高い、複雑なハイブリッドを搭載するLサイズの上級車種に行き着く。メーカーとしては、シンプルで割安なクルマを大量に販売する困難を克服せねばならない。
薄利多売といえば軽自動車が思い出されるが、今の軽自動車は、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」など、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着した背の高い車種が売れ筋だ。
内装も豪華で快適装備も充実しており、売れ筋価格帯は180万~250万円。小型車を超える機能と質感を備えた軽自動車が溢れているが、2030年度企業別平均燃費基準を視野に入れると少々厳しい。
この基準をクリアする軽自動車は、背の高い車種の対極に位置する、軽自動車というカテゴリーの本質を追求した限りなくシンプルな車種だ。
新たな商品力を備えたクルマに期待
例えば、現時点でも低価格で売られているアルト、ダイハツ「ミライース」などをシリーズ化する手があるだろう。
既存のエンジンやプラットフォームを流用しながら、低燃費かつ低価格のベースユニットを開発して、そこに天井の高さが異なる複数の車種をそろえる。
一方、商品性の面では、低燃費や低価格とあわせて、内外装をカッコ良く仕上げることが大切だ。単なる低価格で維持費が安いだけのクルマでは、売れ行きを増やせない。無印良品的な潔さや好感度があり、従来の豪華なクルマが時代遅れで、カッコ悪く見えるような新鮮味も求められる。
このようなクルマづくりは、以前もチャレンジの例があるが、成功しなかった。しかし、今は環境性能の向上と低価格の両立という切実なニーズがあるため、以前とは結果が変わるように思う。
贅沢と見栄を重視した高価格車が大量に売られている今、小さくて軽く、空間効率の優れたシンプルなクルマは、とても新鮮に見えるだろう。


※ログイン後、コメント入力が可能です。