鉄道会社の本社移転はしばしば行われており、最近では2019年に西武ホールディングス(HD)が所沢から池袋へ、京浜急行電鉄が泉岳寺から横浜みなとみらいへ本社を移転した。西武HDの本社ビルは外観にダイヤグラムのモチーフを取り入れ、京急の本社ビルは1階に古い電車やジオラマなどが展示されている「京急ミュージアム」を開設するなど、どちらも鉄道色を前面に打ち出している。東京メトロ新本社の来客エリアもその延長線上にあるといえる。
しかし、東京メトロには京急や西武との大きな違いがある。それは、東京メトロの箱崎移転は一時的なものであり、将来は上野に再移転する計画があるということだ。
将来は再び上野に?
なぜ上野かという点について東京メトロからコメントはなかったが、長年本社が置かれていた場所というだけでなく、日本で最初の地下鉄が浅草―上野間で開業したこともあり、東京メトロは上野と縁が深い。
現在も上野駅周辺で再開発事業を行っており、旧本社ビルも当面保有を続け、何らかの活用をする方向で検討中。担当者は「現在の再開発事業、旧本社ビルの活用も含め、時期や具体的な場所は未定だが、まちづくりの進展状況を見極めつつ判断していきたい」としている。
一時的な移転でありながら、明確なコンセプトのもと徹底的にオフィスを作り込んだ背景には、社員のエンゲージメント向上と働き方改革への強いこだわりがある。執務エリアの集約による日常的なコミュニケーションの活性化は、有事の迅速な情報連携や鉄道運行の支援にも寄与するはずだ。
旧本社の設備更新を機に課題解決へ踏み出した今回の試みは、同社にとって戦略的な一歩となる。箱崎で蓄積されたノウハウは、将来予定されている「次の本社」でさらに大きな花を開かせるに違いない。

