加えて、自衛隊という記号が持つ意味の“揺れ幅”の大きさも見逃せない。消防局や府警のイラストが呼び起こす連想は「救助」「安全」という単一の意味にほぼ収斂するため、たとえ橋渡しの一文が読み取れなくても、イラストそのものが大きく誤解される心配は少ない。だからこそ、これまでのコラボでは大きな批判が出なかった。
ところが自衛隊のイラストが呼び起こす連想は、人によって「災害派遣・救助」にも「軍事・戦争」にも大きく分かれる。橋渡しの一文が機能しないまま、この揺れ幅の大きな記号だけが目に飛び込んできたことで、興味ではなく拒否反応を招いたーーこれが今回の一件の構造だと考えられる。
善意のコラボであっても、その一線を見誤ると思わぬ反応を招く
見た目のデザインは、作り手の意図だけでは完結しない。受け手が長年蓄積してきた「顔」のイメージと「新しいモチーフ」が、どこまでの“距離”で出会い、そしてその距離をどんな一文で橋渡しするかーーそこまで含めて設計して、はじめて正しく機能する。2つの概念をただ並べるだけでは、違和感は興味に転化しない。
今回の一件は、善意のコラボレーションであっても、その一線を見誤ると思わぬ反応を招くことを示す、興味深い事例だと言える。
【参考文献】
※1:J-CAST ニュース「551蓬莱の豚まん袋に自衛隊車両やヘリ 『気味悪い』と波紋、運営会社はどう答えた」(2026年8月26日配信)
※2:Aggarwal, P. & A.L. McGill (2007) Is that car smiling at me? Schema congruity as a basis for evaluating anthropomorphized products. Journal of Consumer Research, 34(4), 468-479.
※3:Bargh, J.A. & T.L. Chartrand (1999) The unbearable automaticity of being. American Psychologist, 54(7), 462-479.
※4:Mandler, G. (1982) The structure of value: Accounting for taste. In M.S. Clark & S.T. Fiske (Eds.), Affect and Cognition: The 17th Annual Carnegie Symposium on Cognition, Lawrence Erlbaum Associates, 3-36. / Meyers-Levy, J. & A.M. Tybout (1989) Schema congruity as a basis for product evaluation. Journal of Consumer Research, 16(1), 39-54.


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