秋津駅には西武鉄道の商業施設「エミオ 秋津」があって、ビアード・パパやカフェ・ド・クリエなど、人気の店が入っているので、こじんまりとしているが賑やかな雰囲気だ。一方、JR側の新秋津駅は、目の前がロータリーになっていて、やたらと空が広い。駅舎はぶっきらぼうな平屋で、こちらはちょっと寂しい感じなのだが、このギャップが昨今巷を騒がせている「秋津パラレルワールド伝説」誕生の理由なんじゃないかと感じたりした。
秋津のパラレルワールド伝説は、ネット掲示板やSNSでの噂から火がついたようだ。秋津駅と新秋津駅を結ぶ乗換経路周辺で、数々の「日常のバグ」が書き込まれて話題となった。
「秋津駅近くで、昨日あったコンビニや洋菓子店が突如別の店に変わった」「喫茶店で過ごすうちに一瞬で数時間が経過した」などの体験談がネット上で拡散。ネット発の有名都市伝説「きさらぎ駅」のような異世界の入り口として注目を集め、のちに地上波のテレビ番組でも検証特集が組まれるほど、全国区の噂となった。
もちろん、よくある都市伝説のひとつなのだけれど、秋津駅の歴史や場所、今後この2つの駅で計画されている乗換通路などの情報を拾いながら街を歩くと、パラレルワールドの入り口が向こうから近づいてくるようなおかしな気分になってきた。
東京の恩恵を受けながら埼玉並みの安さ
東村山市秋津町は埼玉県に隣接するいわば郊外の街だ。ここに首都圏からの流れをつくったのは西武鉄道だ。西武池袋線の秋津駅が開業したのは1917年(大正6年)。一方、JR武蔵野線の新秋津駅は、半世紀以上後の1973年に開業した。武蔵野線はもともと貨物輸送を大きな目的として建設された路線だったが、その後、沿線の住宅開発に伴って旅客路線としての存在感を増していった。
商店街沿いに店舗をかまえる不動産業「三和エステート(秋津町5-6-7)」代表の奥村玄悠さんが、秋津町が直面する現実と問題について語ってくれた。
「ここ東村山市の秋津町は、埼玉県の所沢市と接する町で、さらに東京都の清瀬市とも接しています。西武池袋線の秋津駅の住所表示は秋津になっているのですが、北口は所沢市でそこから少しだけ東に歩くとすぐに清瀬市に入ります。駅のホームは秋津町と清瀬市、所沢市の境界をまたぐ位置にあります」(奥村さん)
境界と聞いて、すぐに「村境」という言葉を連想した。かつて村境には邪悪なモノが村に入らないよう、道祖神などの神仏が置かれた。横溝正史の「八つ墓村」の村境には、「麻呂尾寺」という寺があり、ここの和尚さんが物語の重要人物として描かれる。昔話でキツネやタヌキに化かされるのはたいてい村境だ。秋津のパラレルワールド伝説もあながちいわれのないことではないのかもしれない。


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