なぜ社会にいた時に写経に出会わなかったのか。中には例のでずっとダメな人もいるが、私は案外、そうでもないかなとかすかに思っています」
Aさんが「例の」と書いているのは「マル特無期」のことだ。
「マル特無期」は実質的に「終身刑」のような扱い
検察庁は通達で、無期懲役の判決を受けた人の中でも、とりわけ犯行が悪質などと判断した受刑者を、他の無期刑よりも長期間服役させるようにしている。その受刑者が、俗称で「マル特無期」と呼ばれ、実質的に「終身刑」のような扱いを受けている。
2002年1月の朝日新聞記事によると、検察が前科・前歴、犯行動機などから「同様の重大事件を再び起こす可能性が特に高い」などと判断した受刑者に対し、刑務所側に「安易に仮釈放を認めるべきではなく、仮釈放申請時は特に慎重に検討してほしい」「申請する際は、事前に必ず検察官の意見を求めてほしい」などと文書で伝えているという。
たとえ「マル特無期」と指定されても、受刑者自身にそれが知らされることはない。それでもAさんやBさんによれば、刑務所内でも、
「俺はマル特無期だ」
とあきらめている人を何人も目にしたことがあるという。そういう受刑者は自暴自棄になって暴れたり、精神的に落ち込んだりしていることが多いという。
最後に面会できたとき、Aさんは言っていた。
「とにかく“例の”やつかどうか関係なく、自分がやった罪をよく顧みて、区分も上がるように頑張る。それしか自分のやれることはない」
Aさんの生活態度などが評価され、仮釈放が認められるとしても、平均期間を考えるとまだ10年ほど先になる見込みだ。
(AERA編集部・今西憲之)

