たとえば盆栽の関係者でも、たまに「盆栽」の「栽」を〝切る〟という意味でとらえ、枝を切って育てるから「盆栽」というのだと説明している人がいます。
しかしこれは大きな勘違いです。布を切る「裁断」、有罪かどうか線引きする「裁判」、この「裁」のイメージに引きずられていますね。
この「裁」という漢字はもともと〝服を作る〟という意味で、盆栽とは関係ありません。
「盆栽」の「栽」、この漢字は日本語では「うえる」と訓じます。漢字の「植」も近い意味ですね。
つまり盆栽とは、「盆に植えた植物」なのです。似ている言葉に「前栽(せんざい)」があり、こちらは〝庭に植えた木〟を意味しています。
もっとも「前栽」は平安時代から使われており、「盆栽」が定着するのは江戸時代の終わり頃。この二つの言葉にはかなりの時間差があります。
鉢植えと、何がどう違うのか
ただし、ここで気にすべきなのが、「盆栽」と「鉢植え」の区別です。
鉢植えも盆栽と同じく、鉢に植えて育てている植物ですね。しかしチューリップやハーブの鉢植えが盆栽かというと、ちょっと違ってきます。
盆栽にあって鉢植えにはない大きな差、それが時間をかけて手入れをし、鉢の上に一つの景色を生み出していくという要素です。
たとえば、フウチソウ(風知草)などの草類を植えた、草物(くさもの)盆栽というジャンルがあります。
こうした草物であっても、植木鉢の中で年数を重ねることによって、複雑な表情が生まれて風格が出てくるのです。
盆栽界ではこのように変化した草物を、「おっ、このフウチソウ。ずいぶんと持ち込んだね」などと表現して褒めたりします(盆栽界では年数をかけて育てることを「持ち込む」と言います)。
逆に盆栽と呼ぶのが難しいのがアサガオです。アサガオの鉢植えは、江戸時代に流行した古典園芸です。今でも夏祭りの屋台などで売られており、夏の風物詩として親しまれていますね。
ですが一年草であるため蔓ごと一度枯れ、翌年にはまた種まきからはじめるので、「持ち込み」はできません。
この他にもサボテンの鉢植えなど、盆栽と呼ぶのは難しい鉢植え類があります。生きた樹木を相手にしながら、時間をかけて形を作っていくのが盆栽なのです。

