――真鶴町のどこに魅力を感じたのですか。
真鶴町には、町民自らが町の美しさを定義した、まちづくり条例「美の基準」があります。「町民が町のつくり手である」という文化が、私の教育観と重なりました。
一方で、人口減少が進む神奈川県唯一の過疎地域で、予算や人員は限られています。小さな教育委員会が日々の事務を担いながら、学校や教員を支援するのは容易ではありません。今、小規模自治体は統廃合が進み、どこも似た状況にあります。真鶴町では学校建築と教育内容が一体となった学校づくりを進める計画ですが、これはほかの地域の希望になるはずと考えたことも、真鶴町での挑戦を決めた理由の1つです。
――真鶴町の教育環境と、新しい学校の構想についてもう少し詳しく教えてください。
現在、民間保育所2園、町立幼稚園1園、小学校と中学校が各1校あり、小中はほぼ1学年1クラスという規模です。2030年には、小中を統合した施設一体型の義務教育学校を開校する予定です。
基本構想・基本計画には、「4-3-2制」、「異年齢交流」、町全体を学びの場にする「探究学習」が盛り込まれ、前期課程での「教科担任制」の充実や、第8・第9学年での「教科センター方式」も計画されています。ただし、制度の導入自体が目的ではありません。大切なのは、子どもを中心にした9年間の学びをどうつくるかです。
実際にこの町へ来て思うのは、真鶴町は「ポテンシャルの塊」だということ。地域の方々の教育への関心が高く、子どもたちものびのびして人懐っこい。豊かな自然環境をはじめ、美術館や博物館などの文化施設など、町中に学びの材料があります。これらをつなぐことで、さらに豊かな教育環境をつくれると感じています。
「子ども」「地域」「先生」、みんなで教育をつくる
――就任後は、どのような体制をつくったのでしょうか。
先生・学校に伴走し、新しい学校のカリキュラムを開発する「学び共創室」を教育委員会内に設けました。学校建設に向けた開校推進委員会の専門部会を運営するほか、学校図書館の整備・運営支援、開校に向けた町民との対話の場づくりなども担います。教育委員会が上から方針を下ろすのではなく、現場と共に教育をつくるための組織です。室長を外部から公募し、指導主事、元校長の学校教育指導員など6人で構成しています。
――教育委員の1人として世田谷区立桜丘中学校の元校長である西郷孝彦氏が就任し、教育哲学者の苫野一徳氏も新しい学校づくりに外部有識者として関わるそうですね。
深い知見を持つ方々の参画は心強いです。ただ、学校のつくり手となるのは子どもや先生、地域の皆さんです。対話を重ね、真鶴に合った教育をつくりたいと考えています。


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