価値観や娯楽が多様化するなかで、映画にはどのような力があるのか。西島は、画面に映るのは登場人物や物語だけではないと話す。
「作り手が意図していなくても、街並みや人々の営みなど、さまざまなものが画面の中に映り込んでいます。
例えば、1970年代の日本でロケをした映画を見ると、『当時の東京はこんな街だったのか』と気づくことがあります。デパートの屋上があって、人々はこんなふうに過ごしていたのか、と。たとえスパイ映画であっても、その時代の風景や人々の暮らしが映り込んでいるんです。
物語の中には、自分が行ったことのない場所で暮らす人たちの営みが描かれています。それと同時に、作り手の意図を超えて画面の中に捉えられているものがある。そこが実写映画の非常に強いところだと思います」
さらに、映画には、これまで接点のなかった人や世界との距離を縮める力があると考えている。
「これまで接点のなかった人々や世界を身近に感じたり、自分と同じような思いを持つ、共感できる存在として感じたりする。そこに、映画の持つ大きな力があるのだと思います」
「社会に支えられ、生かされてきた」
2021年、『ドライブ・マイ・カー』で日刊スポーツ映画大賞主演男優賞を受賞した際、西島は自らを「遅咲き」「遠回りしてきた人間」と表現し、「今、ようやくスタートラインに立たせていただいた」と語っている。
それから約5年。国内外の作品に出演し、2年前には独立。自分のペースで一つひとつの作品に向き合うようになった今、西島が見据えているのは、自らの俳優人生だけではない。
「これまで、周りの人たちに支えられ、生かされてきたという思いがあります。これからは、若い俳優の皆さんが才能を自由に表現し、自分らしく生きていくために、自分も何か貢献したいです。同時に、撮影現場の外側に広がる社会にも想像力を働かせ、自分なりの形で何かを還元できたらと思っています」
仕事を詰め込むことをやめ、準備に時間を使うようになった西島。その余白は、演技を深めるだけでなく、これまで得てきたものを、次の世代や社会へどう手渡すかを考える時間にもなっている。


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