「今一緒に住んでいる人たちは、私の本当の両親じゃないの。実は本当のお父さんはフランス人のパイロットで、お母さんはファッションデザイナーだったの。そしてとてもかわいい弟もいたの」とまた一段声を潜めると、彼女は眉根を寄せて、「何いってんの、馬鹿じゃないの」と冷たくいい放った。
あまりの言葉に今度は私が、「えっ」と驚くと、「フランス人ってフランス人形だよ。ようこちゃんはどこがフランス人形なのよ。どうみたって金太郎じゃない。それに弟も顔がそっくりだし。本当の家なんてあるわけないじゃないの」といった。
「えっ……」
私はぶつぶつと、自転車を漕いで見つけた素敵な洋館と庭をのぞいた話もした。それでも彼女は、「ふん」と鼻で笑っていた。そして、
「あたしはクラスのみんなに話さないから、ようこちゃんも他の人にその話をしちゃだめだよ」と釘を刺された。えっ、そんなに人には聞かせられない話なのかと、私は一気に意気消沈し、「わかった。もう誰にもいわないよ」と返事をした。
「そう、そのほうがいいよ」と彼女は納得した顔をして、「またね」と手を振って十字路で別れた。
素敵な洋館は、やっぱり夢だった
そこから長屋に帰るまでは、地獄の時間だった。せっかく見つけた幸せがざーっと遠のいた。重い気持ちで玄関の戸を開けると、案の定、両親は喧嘩していた。母親がお金がないといって怒っていた。父親はそこを何とかするのが妻の役目だろうなどといっていて、いつも喧嘩はこのパターンなのだった。やっぱりこいつは私の弟かと認めざるをえない男子は、またぼーっとヨーグルトを食べながらテレビを観ていた。


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