外見に関する悩みを抱えていても、何に困っているのか、どのような支援を必要としているのかは人それぞれだ。相談のゴールは必ずしもエピテーゼを製作することではない。田村さんは丁寧にカウンセリングすることで、その人の背景や、これからどう過ごしたいかまで聞きながら、必要な選択肢を考えていく。
おしゃれを楽しみ、新しい自分へ。広がる「アピアランスケア」の未来
田村さんのエピテーゼは、医療用シリコンを使用して製作されており、接着剤は不要で取り扱いも簡単だ。バストの場合は粘着面になっており、貼り付けて使用する。指は、サックのように簡単に取り外しができる。いずれも水に濡れること自体は問題なく、手洗いや入浴、温泉など日常生活で使用できる。耐久性や劣化の程度は、部位や使用状況によって異なるが、定期的なメンテナンスやリペアによって長持ちさせることができる。
価格は指(1本)45万円~(税込)、耳(片側)50万円~(税込)、バスト(片側)60万円~(税込)、その他の部位は個別見積もりとなる。完全オーダーメイドのため、カウンセリングや仮合わせなどで4~5回ほど来店し、製作には時間と手間がかかる。
しかしその分、一人ひとりのライフスタイルや使用する場面に合わせて細かくデザインしていく。たとえばバストの場合は、温泉で使いたいのか、日常生活で使いたいのかによってデザインする。
指エピテーゼの場合は、講師としてマイクを持つ際に使用するなら指先を曲げ、フラダンスで使用したい場合は指を伸ばすなど、形や角度をミリ単位でカスタマイズする。
足の短指症の場合は、裸足になったときやサンダルを履いたときに自然に見えるよう、足先全体のバランスを見ながら調整する。
加えて、ネイルを楽しむなど、おしゃれの選択肢を広げることもできる。
これまで1000件ほどの製作相談に応じてきた田村さん。長年のコンプレックスをようやく解消することができたと喜んでもらうことにやりがいを感じている。
「外見が整うことで自信につながり、新しい趣味を始めたり、旅行を楽しんだりする方もいます。また、進学や就職、恋愛、結婚など、これまでためらっていた人生の一歩を踏み出すきっかけになることもあります。乳房などデリケートな部位の相談や、型取り・フィッティングで体を見せていただく場面もあるため、サロンは女性限定としています」
これまで外見に関する悩みは置き去りにされがちだった。それが2023(令和5)年3月、国は「第4期がん対策推進基本計画」のなかで「アピアランスケア」という言葉を明言した。これは、医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケアのことだ。ようやく、外見の変化による悩みに支援の目が向けられるようになってきた。
「近年は、アピアランスケアの広がりとともに、エピテーゼの購入費を助成する自治体も増えてきました。私が起業した2017年と比べると、大きく状況が変わったと感じます。一方で、短指症や小耳症など先天的な方は、こうした支援の対象にならない場合も多く、まだ課題が残っています」
悩みを抱える人に寄り添い、エピテーゼを通じて、その人がこれからどう過ごしたいのかを一緒に考えていく――この先も、自分が取り組むべきことは変わらないと田村さんは言う。


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