あえて、仕組みがわかりやすいアナログな機械も使っている。失敗の原因をわかりやすくするためだ。精密機械だと仕組みが複雑でわかりにくいけれど、シンプルなつくりの機械であれば、失敗に応じて改良もしやすい。
機械以外の道具も、すぐに量販店などで購入できるものを使う。壊れたときに仕事が止まるとルーティンが崩れ、力を発揮できなくなる人が多いからだ。
近年は液体石けんが主流になり、原価も上がる中で、固形石けん事業をたたんだり、縮小したりする企業も多い。特に、人件費がかかる細かな作業は敬遠される。しかし、ねば塾の場合は、そもそも人ありきで仕事をつくっているからこそ、むしろ、細かくて面倒な作業ほど得意だ。
とはいえ、一般企業で人に合わせて仕事をつくるとなると、不平等感が出ないのだろうか。笠原さんに尋ねると、「うちはね、かなり不平等、ありますよ」と笑ってこう続けた。
「どんな仕事でもみんな能力って違うはずなんですよ。だけどそれが適正に給料に反映されているかというと、よっぽど突出していない限り、多分そうではないと思います。完全に平等なところなんてないんじゃないですかね」
たしかに、障害のある人たちは仕事を覚えるのも、仕事をするスピードも遅いかもしれない。けれども、彼らでなくてはできない仕事がある。少なくとも、その人のためにつくった仕事は、その人が他の誰よりもプロフェッショナルだ。商品も人も「マイナスがあるからプラスが楽しいんです」と笠原さんは笑う。
さらに、数値的に評価はできなくても、「お互いに目に見えないところでバランスをとっている」と、笠原さんは続ける。
「障害がある人と一緒に働くことで、むしろ充実感を得られて気持ち的に支えられている人もいます。子育てや介護など、障害以外の理由でフルで働けない人も、安心して働けますし。うちみたいな考えが広がったほうが絶対みんな気持ちがいいと思うんです」
人気コスメ「OSAJI」との出会い
こうした姿勢を通じて育んだねば塾の技術は、社内だけではなく社外からも評価されることになる。
2010年、ある人物が、ねば塾に声をかけた。資生堂を経て松山油脂で石けん開発を手掛け、その後、日東電化工業による化粧品ブランド「OSAJI」に技術顧問として招かれた町田弘道さんだ。
町田さんは、「俺がつくった石けんが抜かれた!」と、かねてよりねば塾に注目していた。さらに、偶然にも幼馴染がねば塾でグループホームの世話人として働き始め、その経営にも関心を持つようになったという。


※ログイン後、コメント入力が可能です。