そしてあるとき、ねば塾に仕事を依頼するきっかけが生まれた。
通常、石けんを固める工程でグリセリンは取り除く。しかしOSAJIは、そのグリセリンを生かして保湿力を高めた石けんをつくれないかと考えた。その開発をともにする石けん工房をディレクターが探していると知った町田さんは、迷わずねば塾を紹介したのだ。
「最初は五徳で鍋に火をかけて実験したんだけど、つぶつぶが出ちゃうとか、滑らかにならないとか、いろいろ問題があってなかなか進まなくて……結局納得がいくものができるまで、2年かかりました」(笠原さん)
2年かけて開発したやわらかい質感の石けんは、OSAJIの目玉商品「ローソープ(生石けん)」として販売が開始された。
共同開発を機に、化粧石けんのOEMもスタートし、その後もOSAJIのOEM製造を担い続けている。開発したローソープは、仕上げに、環境に配慮した木製のヘラを紐で結ぶ仕様。手作業が得意なねば塾ならではの商品となった。
その人は働くことで、何を望んでいるのか?
仕事に向かう姿勢は、人それぞれだ。給与も勤務時間も、望ましい雇用形態は異なる。生活のためにお金が必要なのか、それとも、人生の質をあげるために働くのか。働く目的によっても、求めるものは変わるはずだ。
「『会社だからこうしなきゃ』じゃなくて、その人が働くことで何を望んでいるのかを聞き取ることが大事だと思います。それが会社にとってプラスになるように、組み合わせてあげればいい。たとえば1日1時間働けば十分っていう人も活用したり、半年休職しても籍を置いてあげたり。個人の能力や、状況の変化に応じて、部署や職務内容を変えたりすることができれば、みんな社会貢献できるんじゃないかな」
現在、年間1億7000万円の売り上げのうち、原価はおよそ4割程度で、人件費が3割だ。ただし、原価は商品によってばらつきが大きく、実際の利益率はギリギリ1割程度だという。売り上げの15%程度がOEM製造によるもので、「白雪の詩」をはじめとするオリジナル商品が売り上げの柱だ。
先述の通り、石けん業界は縮小の一途だ。だがそれゆえに、どこかがなくなれば、どこかに仕事が流れる。ねば塾は、小ロットでも請け負える機動力の高さと、手仕事による高品質を売りに、着実に業績を伸ばしてきた。障害者が作っていることを表立って売りにしたことはない。
「お情けで買ってもらう要素をゼロにしたほうが、自分たちの給料が、自分たちが作ったもので支えられていることを実感できますよね。自分たちの足で立っていると実感できたほうが、やる気につながりますから」
後編では、「俺は生かされているだけ」という2人の男性の言葉から始まった、ねば塾の半世紀と、ねば塾が福祉制度に頼らない"会社"であり続ける理由に迫る。


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