「円柱の透明石けんをカットする作業は、つるつる滑るし季節によって硬さが変わって切りづらいんですけど、彼はすごく丁寧にそれを切れたんです。お客さんから、自分の所で切ると形が不揃いだから、彼が切ったやつがほしいって指名が入るくらいになりました」
重田さんは、10年かけてこの仕事を覚え、さらにそこから9年かけて、透明石けん以外の仕事も少しずつできるようになったそうだ。取材をした日は、「機械練り」という方法でOEMの石けんを製造する作業を行っていた。
「どうしてこんなにいろいろ柔軟にできるようになったの?」と笠原さんが聞くと、重田さんはニヤッとしながら「成長したのよ」とだけ答えるのだという。
「10できる力をずっと10使っていたら疲れちゃいますよね。だから、10のうち7〜8ぐらい、人によっては5〜6ぐらいにして、気持ちよく、長く続けていこうよっていうのが『今日できることは明日やろう』の真意なんです。それは障害者手帳を持ってない人でも同じで、例えば、週に3日間だけなら働けますとか、子どもの都合で働く日を変えてほしいとかも、うちでは全部OKです。嫌な気持ちで通っていてもいいことないですからね」
萎縮せずに「失敗を言い出せる」状況をつくる
敷地内を案内してもらっていると、金型にドロドロの石けんを流し込んで固めたのちにカットする「枠練り」の現場に、小さな木製のブロックが転がっていた。なんだろう、と思って見ていると、石けんを均一にカットするために必要なのだと教えてくれた。
「石けんのでっかい塊に鉄枠をはめて、鉄枠から上に出た部分をピアノ線でカットするんです。その際、鉄枠の下に、石けんの厚みに応じてこの積み木を重ねて置きます。積み木が石けんの厚さと同じになっているので、一段カットするごとに一つ積み木を取り除けば、数字や文字が苦手な方たちでも、同じサイズに切れるんですよ」
これが、「失敗は他人のせい」を支える仕組みだ。失敗したときにそれを責めるのではなく、失敗の原因を人ではないところで考え、改善する。
「たとえば『あの機械のボタンが押しにくいところにあるから間違えたんだ』とか、『測りづらいからいけないんだ』とか、失敗の原因をその人以外のところで考えるんです。そこを改善したうえでまた同じ失敗をしたら、本人も気をつけるようになっていきますしね。彼らが萎縮せずに失敗したことを言えるような状況にするのが大事だと思っています」


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