株主総会シーズンが終了。今年も「アクティビスト(物言う株主)による株主提案が過去最多」といった報道が多かったものの、本当の注目点はアクティビスト対策としてのいわゆる「有事型買収防衛策」の発動議案が3社で可決されたことである。
買収防衛策は本来、経営者の保身のための策として嫌われ、導入や発動は反対されることが多いにもかかわらず、なぜ今年の株主総会では3社も可決となったのか? 今後、アクティビストには有事型買収防衛策で対抗すればよいと考える上場企業経営者が増えそうだが、そう単純に捉えてしまうと取り返しのつかない失敗をおかすことになりかねない。
そもそも日本で導入されている買収防衛策とはどういった仕組みなのか。筆者の著書『株式投資の基本はアクティビストに学べ』(朝日新聞出版)の内容から抜粋して説明する。
2種類の「買収防衛策」
買収防衛策には平時型と有事型の2種類がある。敵対的買収やアクティビストの襲来に備えて導入しておくのが平時型で、正確には「事前警告型ルール」と呼ばれる。
事前警告型ルールとは、上場企業が買収を提案された場合に、その提案内容(買収者グループの概要や買収目的、買収価格の算定根拠、買収後の経営方針など)を取締役会や株主をはじめとしたステークホルダーがきちんと検討するための時間確保を目的にした、自主ルールのことである。
具体的には、自社の株式を20%以上取得しようとする買収者に対し、詳細な情報提供を求める内容になることが多い。一般的に20%以上の株式を取得されると持ち分法適用関連会社になり、買収者が自社の経営の意思決定に重要な影響を与えられるようになるため、一定のハードルを設けておく形だ。
このルールに従って買収提案がなされる場合は基本的に、新株予約権の無償割り当てという対抗措置が発動されることはない。一方、ルールを破ったり、企業価値や株主価値を著しく毀損したりする買収提案だった場合、対抗措置が発動されることになる。
なお、一般的には事前警告型ルールのことを単に「買収防衛策」と呼ぶことが多いものの、厳密には買収防衛策ではなく、あくまでも買収提案の詳細な情報と検討するための時間を得るためのものにすぎない。
次に有事型とは、その名のとおり有事、すなわち、アクティビストや敵対的買収者が登場し、具体的な買収の脅威が発生した際に導入される買収防衛策の総称である。明確な定義があるわけではないが、具体的には実際に敵対的TOB(株式公開買い付け)や大量の市場買い付けなどが実施された場合に、それらの阻止などを目的として特定の買収者をターゲットにして導入される措置のことだ。
機関投資家は一般的に、平時に事前警告型ルールを導入しておくのではなく、具体的な買収提案の可能性が高まったタイミングで、必要に応じて有事型買収防衛策の導入・発動を株主に確認してほしいというスタンスであることが多い。
事前警告型ルールの存在が買収提案を萎縮させる可能性があり、機関投資家にとっては買収提案という儲ける機会を逸失しかねないからである。
アクティビストが過激化したから可決された?
6月の株主総会で買収防衛策が可決された3社は、ダルトン・インベストメンツのターゲットになっているあすか製薬ホールディングス(HD)と文化シヤッター、3Dインベストメント・パートナーズのターゲットになっている東邦HDである。いずれも有事型買収防衛策の発動を提案したところ、それぞれ87.31%、71.75%、54.70%の賛成率で可決された(3Dの詳細はこちら)。
経営者の保身と見られかねない買収防衛策が可決された要因を、「MBO(経営陣による買収)を強行するなどアクティビストの行動が過激化したから」「アクティビズムへの逆風」と見る向きもあるが、筆者はこういった主張を否定的に捉えている。
そもそもアクティビストの要求する、経営陣やPE(プライベートエクイティ)ファンドなどによる非公開化を目的としたMBOは過激な行為なのだろうか?
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