異例すぎる企画が通った背景には、出版業界全体を襲う構造的な危機感と同社が直面した最大の苦境がある。紙の出版物の市場縮小に加え、昨今の物価高騰や円安が旅行業界全体に影を落とす中、決定打となったのが2020年からの「新型コロナウイルス禍」だった。
当時の社会情勢により、同社の親会社であるJTBも大打撃を受けた。旅行需要が蒸発し、売り上げは大幅減。観光ガイドをメインとしたJTBパブリッシングも一時は売り上げ9割減で、会社の存続を揺るがすレベルの出来事であった。
「旅行ガイドだけに頼る『一本足打法』では、予期せぬ社会的危機を乗り越えられない」。この強い危機感から、同社は自らの強みである編集力とブランド力を、旅行以外のエンタメやIP(知的財産)コンテンツへ積極的に応用する姿勢を強めていった。
『地球の歩き方』や『まっぷる』も多角化している
『るるぶ』に限らず、旅行ガイド業界全体に目を向けても、競合他社は生き残りをかけた多角化・拡大戦略を猛烈に推し進めている。
20年から学研グループの傘下に入った『地球の歩き方』は、『ジョジョの奇妙な冒険』や『ムー』などのなど人気コンテンツや、生活雑貨チェーン「3COINS」との異色コラボを次々とヒットさせ、海外旅行書からサブカルチャーやエンタメへと領域を拡張。昭文社の『まっぷる』も、ブラウザゲーム「刀剣乱舞ONLINE」とのコラボやデジタルサービスへの転換など、多面的な展開を見せている。


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