「相手が何を考えているか」→「人はなぜそう考えるようになるのか」→「それを作っているメディアとは何か」→「では、そのメディアをどう届けるか」――問いのレイヤーは変わっていくが、そこにある「相手の心の中身への興味」、そして「人が何を見ているか」を読み続ける眼差しは、少しも変わっていない。
盤面のカードに向き合っていた中学生の手つきと、四半期の市場分析レポートに向き合う40代の手つきが、実は同じ動作の繰り返しだったことに、本人がいつ気づいたのかは分からない。だが、ある時期からは、自分の関心がずっと同じ場所にあることを、自覚的に選び直しているように見える。
いま彼は、講演や教育活動にも力を入れている。書籍『アニメビジネス 漫画・小説・アニメが100倍おもしろくなるアニメの教養』を上梓し、トレーディングカードゲームを祖とする会社のリクルート活動の一環として、大学生や高校生にメディア論の講義も行っている。次の世代に「人が何を見ているかを読む眼差し」を手渡すこともまた、彼の仕事の一部になっている。
「相手の心や思考を読む」遊びが職業になった
神童と呼ばれた子の行き先は、必ずしも学業成績の延長線上にあるわけではない。ときにそれは、中学生の頃にトレーディングカードゲームで月30万円を稼いでいた少年が、30年かけて、そのままの手つきで日本のアニメ市場を読み解いている、そんなかたちを取る。
大貫佑介という人の歩みは、幼少期に本気で夢中になった「相手の心や思考を読む」という遊びが、大人になってそのまま職業になり得るという、ひとつの証明のように見える。


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