横浜市緑区の丘陵地に広がる竹山団地。約2800戸の住戸がある中で、神奈川県住宅供給公社(以下、公社)が所有する賃貸住宅の一部が学生寮のように使われている。
学生たちは、上層階の空いていた住戸で2〜3人が共同生活を送る。食事は、商店街のあるセンター地区の食堂で専任の調理人がつくり、学生も当番で手伝う。
団地になぜ大学サッカー部の“寮”があるのか。関係者に取材すると、ユニークな大学連携の取り組みが見えてきた。
「団地」は未来社会を学べる場
「サッカーというスポーツは、ボールを持つ時間が非常に短いんです。試合の前後半90分の間で、1人の選手がボールを扱う時間は1分30秒程度。残りの時間は仲間のために頭を使って先を読み、戦術を理解して動きます。足技を使い、最後はハートでやるんですね。そのハートを育てなければいけません」
そう語るのは、神奈川大学サッカー部の監督、大森酉三郎(おおもり・ゆうざぶろう)さんだ。2019年に同大学スポーツ戦略室の職員としてサッカー部監督に就任し、競技指導とともに、地域との関わりを取り入れた人材育成に取り組んでいる。
大森監督は、サッカーの強化とともに、人間力やライフスキル、心の成長も重視してきた。そこで目を向けたのが「団地」という存在だ。団地は、高齢化や世代間交流の減少など、社会の課題が一足先にあらわれる“未来社会”であると、団地再生やまちづくりを手がける知人から聞いていた。
「団地は高齢化で自治会の活動も人手が足りない。子どもが減り、世代間の関わりも希薄になっています。そうした場所で地域に溶け込みながら生活することで、サッカーで大切な心を使うことを育めるのではないか。学生にとってこれからの社会を学べる、素晴らしい環境だと思いました」(大森監督)
当時、サッカー部に寮はなく、部員はアパートや実家などから通っていた。練習は緑区の中山グラウンドで行われ、ほかの運動部も使用しており、安定して練習できる時間帯は早朝だった。
「授業に間に合うようにするには、7時半までに練習を終えたい。逆算すると遅くても朝6時に練習を始めたい。でも、その時間に交通機関を使って集まるには厳しい学生もいます。強化を進めるにはやはり全寮制でなければ難しく、一方で寮をつくる予算はない。そこで、立地条件の良い場所に寮のような生活ができる団地があれば、突破口になるのでは、と考えたのです」(大森監督)


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