法務省が起用したのは、まさに「見た目の説得力」だった。全身入れ墨、迫力ある表情という強い視覚的インパクトで、お堅くなりがちな更生保護というテーマへの注目を集めようとした。ところが同じ見た目が、狙いとは正反対の「誇示」というメッセージを発してしまったのだ。
なぜこんなことが起きるのか、「見た目の科学」で解き明かしたい。
0.1秒で「支配的か」「信頼できるか」を判定している
人は初対面の相手を見た瞬間、意識するより先に「支配的か従属的か(支配性の軸)」「善良か悪意があるか(信頼性の軸)」という2つの軸で評価を下していることが、明らかにされている(※1)。この自動的な判定は、わずか0.1秒ほどで完了するとされる。
入れ墨や迫力ある表情は、支配性の軸では「支配的」側に強く振れて評価されやすく、同時に信頼性の軸では「悪」側に振れて評価されやすい。
逆に、柔らかい目元や穏やかな顔の輪郭は、支配性の軸では「従属的」側に、信頼性の軸では「善」側に評価されやすい。今回の出演者たちの見た目は、まさにこの2軸のうち「支配性は高く、信頼性は低い」という位置にあったことになる。
多くの共感を集めた《見せびらかしてる時点で「悪かったんだぞ」とかっこつけたいんだろ?》というコメントは、まさにこの組み合わせを言い当てている。
法務省の広報担当者が引き出したかったのは、入れ墨や迫力ある風貌が持つ「目を引く力」、つまり支配性の軸の高さがもたらす視覚的インパクトだった。しかし人間の脳は、それと同時に信頼性の軸も自動的に処理してしまう。「隠さず見せる」という同じ行動が、信頼性の軸では反省ではなく誇示のシグナルとして処理されてしまったのである。
先の入れ墨当事者の投稿に「うーん」が多く集まったのも、この自動判定が個人の主観的な意味づけを上回りやすいことの表れだろう。


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