なぜ、プーチンはこうした選択をしたのか。その背景にあるのは、開始から約4年半が経過したウクライナ侵攻において、ロシアへの支援を続ける中国と北朝鮮との軍事協力の強化が、プーチンにとって死活的な重要性を帯びてきたことだ。
ロシアは現在、補給路や燃料関連施設へのウクライナによる長距離ドローン攻撃などにより、苦戦を強いられている。このため対東アジア政策においても、中朝との連携関係強化が喫緊の最重要課題であり、北方領土問題に時間や外交資源を割く余裕がなくなったのだ。
中朝との軍事連携強化の概要は具体的には以下のとおりだ。すでに24年に1万人以上の部隊をロシアに派兵した北朝鮮は最近、3万~5万人の部隊を追加派遣することでロシアと合意し、弾道ミサイル40発も供与したと言われている。
中国も従来軍民両用の部品をロシアに送ることで、実質的にロシアの兵器生産を支援している。さらに25年以降、中国が国内でロシア兵に訓練を行っているとの情報がある。これについては、ドイツ政府が7月、駐ドイツ中国大使に抗議したほどだ。
つまり、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との22年6月の当時の岸田文雄首相の警告が、より明確に現実のものになったのだ。
中国は北方領土問題での中立的立場を放棄した
今回の北方領土入りをめぐっても、中ロの共同歩調ぶりが際立った。プーチンが択捉島を訪れた13日、呉江浩(ご・こうこう)駐日大使とロシアのノズドレフ駐日大使は、共同文書を発表。北方領土には直接言及しなかったものの「中ロは第2次大戦の勝利の成果を歪曲、否定する行為に断固反対する」と強調した。これは、北方領土問題ではこれまで中立的立場をとっていた中国が、間接的ながらも、ロシア寄りの立場に移行したことを意味するものだ。
つまり、プーチンの初の北方領土入りは、ロシアの単独行動ではなく、両国間で事前にしっかりと調整された対日強硬外交の発露だったと筆者は考える。
近年、爆撃機の日本周辺飛行や海軍艦艇による太平洋での「合同パトロール」を行うなど対日牽制で共闘していた中ロだが、7月半ばには、上記した発露を予兆するような動きがあった。中ロの海軍艦艇4隻が日本の排他的経済水域(EEZ)内で実戦演習を行い、うち中国のミサイル駆逐艦1隻が射撃訓練を実施したのだ。


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