とはいえ、完全に黙殺すれば、「オールドメディアにとって都合が悪いから取り上げない」と受け取られかねない。取り上げても疑われ、取り上げなくても疑われる。となると、メディア側に打てる手はないのだろうか。
いや、そんなことはない。ここで重要なのは、日頃から「情報」に触れられる環境をつくることではないか。2026年は、戦後81年にあたる。厚生労働省が2026年7月に公表した数字では、被爆者健康手帳所持者は9万1105人で、平均年齢は86.66歳(3月末時点)。直接の体験を聞ける機会がなくなってしまう前に、一人ひとりが心の中に、“先の大戦に対するアンテナ”を立てる必要がある。
スキマを空けているのは、メディアの側ではないか
メディア業界には、「8月ジャーナリズム」という言葉がある。終戦記念日のある8月になると、戦争と平和を考えるコンテンツが集中するが、それ以外の時期には扱いが薄くなる——。そのような報道のあり方は、以前から批評の対象になってきた。
年に一度、集中的に伝えること自体が悪いわけではない。ただ、8月以外の戦争報道は、訃報や慰霊、法廷闘争といった「出来事」があったときに限られがちだ。裏を返せば、出来事がなければ触れられない。年間を通じて戦争を扱う枠は、多くのメディアに存在しない。
だから普段は歴史に触れる機会が乏しく、8月近辺にのみ情報が押し寄せる。その空白に、「隠された真実」を名乗る物語が入り込む。つまりデマは、発信者と信じる人だけが生んでいるのではない。空いた場所に、誰かが物語を置いただけだ。そのスキマを空けてきたのは、私も含むマスコミではないか。
日頃は十分に伝えず、「ニュースバリューのあるタイミング」のみ積極的に報じる。そこから不信感が育まれているのだとすれば、「なぜあんなデマを信じるのか」と問う前に、問うべき相手がいる。


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