1つ目は、台湾の消費文化とサプライチェーンの構造に、強い「コストパフォーマンス(CP)」追求の市場圧力が存在することだ。
台湾の食品・外食産業では競争が激しく、利益率が低い業態も少なくないと指摘されている。消費者が安価で高品質な食品を求める一方、メーカーや飲食店は原材料費や人件費などのコスト削減を迫られやすい。
食品安全問題を生みやすい台湾の体質
こうした市場環境が、安価な非食用油や工業用原料、食品用として認められていない代替原料などを使用し、利益を確保しようとする意図的な違反行為の温床になってきたとの分析もある。
2つ目は、台湾の食品産業が、一部の大手企業だけでなく、多数の中小規模の加工業者や小規模事業者によって支えられていることだ。
14年の廃食油事件をはじめ過去の食品安全事件では、家庭や飲食店から排出された廃油などが、個人の回収業者や中小の事業者を経由して売買され、最終的に食品原料として不正に利用されていたケースが明らかになっている。
また、工業用の化学品と食品用原料が複雑な流通網の中で扱われることで、食品安全を所管する行政機関と環境行政などの監視の境界に入り込む余地が生じ、不正な転用や横流しが発生しやすいとの指摘もある。
3つ目は、制度上、食品安全衛生管理法などの規制が強化されても、それを現場で監視・検査する行政側の人員や体制には限界があることだ。
台湾では、全国に多数の飲食店や食品関連事業者が存在する一方、地方政府の衛生局などがすべての事業者を常時監視することは現実的に難しい。そのため、定期的な立入検査やサンプリング検査、書類確認などを組み合わせた監視体制に頼らざるをえない。
仮に事業者が意図的に記録を改ざんしたり、通常の検査では確認できない工程で違法な原料や化学物質を使用したりしていた場合、内部告発や製品検査、事故などをきっかけとしなければ発覚しにくいという問題が生じる。
4つ目は、法的な罰則と違法利益の剥奪をめぐる課題である。
かつて台湾では、食品安全事件を起こした企業に科される刑罰や罰金が、違法行為によって得られた利益に比べて十分な抑止力を持っていないとの批判があった。とくに14年の食用油事件を契機として、食品安全衛生管理法の罰則強化や違法利益の追徴、企業責任の明確化などを求める議論が活発になった。
その後の法改正によって、食品安全に関する違法行為への罰則は大幅に強化され、違法所得の追徴や没収、企業の責任追及なども拡充された。一方で、企業活動によって得られた利益のうち、どこまでを違法行為による利益と認定し、追徴・没収するのかという問題は、依然として司法上の難しさをともなう。
5つ目は、企業による「自主的な食品安全管理」と、その実効性の問題である。
行政側の検査技術や監視能力が向上しても、企業自身による日常的な衛生管理やリスク管理が機能しなければ、食品事故を完全に防ぐことはできない。
今回のベンゾ[a]ピレン基準超過問題でも明らかになったように、企業側が原料の受け入れ基準を緩和したり、製造工程におけるリスク評価を十分に行わなかったりすれば、HACCPなどの衛生管理システムが導入されていても、制度そのものが形骸化する可能性がある。


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