しかし、台湾全土で怒りは爆発した。「滅頂運動」と呼ばれる頂新グループ製品の不買・排斥運動が台湾各地に広がり、大手スーパーなどの小売店でも頂新グループの商品を撤去する動きが相次いだ。
さらに、食品業界への不信は、台湾が誇る「小吃」と呼ばれる庶民的な食文化にまで及び、外食や加工食品全般に対する消費者の警戒感を強める結果となった。
もう1つ大きな影響を及ぼしたのが、08年に中国で発生した「三鹿粉ミルク事件」と、それにともなう台湾へのメラミン汚染の波及である。
中国製品への不信感高めた「三鹿粉ミルク事件」とメラミン汚染
中国の三鹿集団などが製造・販売した乳製品からメラミンが検出され、乳幼児に腎結石などの健康被害が相次いだことを受け、台湾でも中国から輸入された乳製品や食品原料などに対する緊急検査が行われた。
08年9月、中国でメラミンが混入された粉ミルクを飲んだ乳幼児に腎結石などが相次いで確認されたことを受け、台湾の衛生当局は中国産の乳製品や乳原料などを対象に緊急検査を実施した。
その結果、牛乳・乳製品だけでなく、中国から輸入された食品添加物の炭酸水素アンモニウムからもメラミンが検出された。炭酸水素アンモニウムは食品の膨張剤として使用されていたため、パンやビスケットなどの加工食品にも汚染が及んでいることが判明した。
衛生当局は中国産の乳製品などに対する輸入規制を強化したが、メラミンの基準値をめぐる対応では混乱も生じた。当初、メラミンについて「ゼロ」としていた基準を、原料・加工食品について2.5ppmまで認める方針に変更したことで、「毒物を解禁するのか」と野党や市民団体などから激しい批判を浴び、その後、方針の見直しを迫られたのである。
この事件をきっかけに、台湾では中国から輸入される食品や食品原料に対する安全面での不信感が一段と強まった。パン店、カフェ、ケーキ店などでは、自店で使用する粉ミルクや生クリームなどがニュージーランド産やオーストラリア産であることを示す表示を掲げる動きも見られ、外食・製菓業界全体に大きな警戒感が広がることとなった。
台湾では、大なり小なりの食品安全・衛生問題が、数年から数十年の間隔で繰り返されている。その背景には、単なる個別企業の「不祥事」にとどまらず、社会構造や経済慣行、行政・法制度上の課題、さらにはサプライチェーンの複雑さなどが絡み合った「構造的な問題」があるとの指摘もある。


※ログイン後、コメント入力が可能です。