こうした批判的な検証に耐えられるイデオロギーもあるかもしれないが、多くはないだろう。自分たちにとってとりわけ大切なイデオロギーをはからずも疑うことになるかもしれない。
イデオロギーを科学的に研究することで、私たちは自分が信じ込んでいる偶像や象徴、比喩や夢想的な理想を問い直す必要性に気づくことができる。また、慎重な分析と率直な内省のきっかけにもなる。
さらに言えば、個人や社会の行動の土台にもなる。私たちの信念が神経認知学の面で何を起源とし、どんな結果をもたらすのか――信念はどこで生まれて、私たちの身体をどのように変えるのか――をしっかりと調べれば、持ち続けたい信念体系と、手放したいと思わされる信念体系がそれぞれどんなものなのか、その手がかりが得られるだろう。
イデオロギーは脳そのものを作り変える
硬直的な教義を熱狂的に信じることは、1つのプロセスとしてニューロンに染み込み、身体の中を流れていく。イデオロギーは、私たちの生活を覆い尽くすだけでなく、皮膚や脳、神経細胞に入り込むのだ。
全体主義的イデオロギーは、政治的な主張や討論に接しているときの脳だけではなく、どんな脳にも働きかける。政治にまったく関わっていないときでさえ、脳ではイデオロギーの大きな影響が観察されることが、科学によって明らかにされてきている。
私たちの脳は、教え込まれたことを気づかぬうちに深いレベルで肉体化できるので、私たちが実行するようになった社会的習慣は、心と身体にとっては生物学的レベルの現実になりうる。
だからこそ、個人が硬直的なイデオロギーにどっぷり浸かると、政治的な意見や道徳感覚の傾向だけではなく、脳そのものが作り変えられていく危険性があるのだ。
(翻訳:熊谷玲美)


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