こうした接着技術の蓄積は、一朝一夕に築けるものではない。学校向けの販売網を持つことよりも、用途ごとに求められる性能を実現する技術力が競争力となる市場だった。
そのため、文具メーカーが商品ラインナップの延長として家庭用接着剤市場で存在感を示すことは、必ずしも容易ではなかったのではないだろうか。
その結果、家庭用接着剤市場では、少数の総合接着剤メーカーが長年にわたり市場をリードし続ける構図が出来上がっていった。
「ボンドは知っているが、コニシは知らない」理由
ここまで読むと、多くの人は「コニシは家庭用接着剤メーカーなのだ」と思うかもしれない。だが、実はそうではない。そしてそこに、冒頭の「ボンドという商品名は知っていても、コニシという会社名は知らないのはなぜか」という疑問の答えがある。
家庭用接着剤「ボンド」は、コニシのメイン商材ではない。コニシは創業以来、接着技術を核に工業用・建築用接着剤を手掛けてきた総合接着剤メーカー。「ボンド木工用」も、もともとは業務用途で培った接着技術を背景に生まれ、家庭でも使えるよう商品化されたものだった。
現在でも、家庭用接着剤事業がコニシ全体の売り上げに占める割合は約1割。残る約9割は、建築、土木、自動車、電子部品、住宅、インフラなど、一般消費者の目にはほとんど触れないBtoB事業が占めている。
私たちが知っているボンドは、コニシという会社の「顔」にすぎない。その本質は、日本のものづくりを接着技術で支えるBtoB企業なのだ。
後編では、その見えない9割――建築、土木、自動車、電子部品など、日本のものづくりを支えるコニシのBtoB事業に迫っていく。
(後編に続きます)


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