その後、履修内容や授業時間は指導要領改訂の度に削減され、ついに2002年(高校は03年)から始まる「ゆとり教育」の授業時間では、算数が869時間、中学数学が315時間になった。
ちなみに、高度経済成長期の終わりを告げる頃まで算数の授業時間数は1047時間あり、中学数学の授業時間数は420時間あった。
「ゆとり教育」の時代、ゆとり教育を支持する方々から、「ゆとり教育をご批判される方々は『円周率約3はけしからん』とよく言われましたが、教科書にはちゃんと3.14と書いてあります。ご批判の前に教科書をちゃんと見ましょう」、と散々言われた。筆者はその都度、次のように反論したことを思い出す。
確かに、3.14という記述はあります。しかし、それは意味のない3.14なのです。例えば、半径が11cmの円の面積を求めると、「11×11×3.14=121×3.14」という計算が現れます。そこで、3桁同士の掛け算が出てきます。
ところが「ゆとり教育」の筆算では、2桁同士の掛け算は教えるものの、3桁同士の掛け算は学習指導要領範囲外となって、そこで「円周率は約3として計算してよい」となったのです。したがって、問題の本質は「3桁同士の掛け算」を学習指導要領範囲外にしたことです、と。
ドミノ倒し現象を見てもわかるように、1、2、3、4、5……と続いて成り立つ性質の理解には、「3」の場合の理解が大切である。2個のドミノだと倒す牌と倒される牌の関係であるが、3個のドミノだと真ん中の牌は倒されると同時に倒す作用がある。筆者はそのような視点から、「3桁同士の掛け算」の意義を訴え続けてきた。
そして06年7月に、国立教育政策研究所は「特定の課題に関する調査(算数・数学)」(小4〜中3約1万9千人対象)に関して次の報告をした。小4を対象とした「21×32」の正答率が82.0%であったものの、「231×21」のそれが51.1%に急落したこと。さらに小5を対象とした「3.8×2.4」の正答率が84.0%であったものの、「2.43×5.6」のそれが55.9%に急落した、と。
これを機に掛け算の桁数の問題は注目され、文科省の専門家会議でも議論されるようになり、こうした問題は改善されてきた。
数学のカリキュラムがクルクルと入れ替わる弊害
90年代の半ばから始まった数学I、数学II、数学III、数学A、数学B、数学Cという高校数学のカリキュラムにおいては、建前としては数学I、数学II、数学IIIがコア科目、数学A、数学B、数学Cがオプション科目となっている。
問題なのは、これら6科目の中身が約10年に一度の学習指導要領の改訂の度にクルクルと入れ替わることである。主な状況を参考までに示すと、以下のようになる。


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