転機は、「モテコンサル勝倉」として受けたウェブメディアの取材だった。顔写真付きの記事が公開され、想定外にバズり、Yahoo!のトップニュースに掲載されたことで、会社に副業が知られることになる。
「上司に呼ばれて、部屋には人事が3人くらいいました。かなり深刻な空気でしたね。規定上、問題ない範囲で副業をやっていたつもりでしたが、ダメだったようです」
副業を辞めるか、銀行を辞めるか。いったんは持ち帰ったものの、答えはすんなり出た。
「オフィスに戻って、『辞めます』と部長に伝えました」
そして2019年、勝倉さんは三菱UFJ銀行を退職し、株式会社SHOW MEを設立。「モテコンサル勝倉」として独立した。
「ナレソメ予備校」の立ち上げ
その後、勝倉さんは共同代表の宇波氏とともに結婚相談所「ナレソメ予備校」を立ち上げる。YouTube公式チャンネルの登録者数は11万人を超え、毎日19時に婚活動画を配信。成婚率84.1%、累計成婚者数は3600名を突破した。
彼女が見据えているのはさらに先だ。結婚がゴールだとは思っていない。幸せな結婚でないと意味がない。夫婦関係をどう育み、どんな家庭を築くのか――結婚という一時点ではなく、誰もが誰かと長期的につながりながら、幸せに生きられる仕組みを作りたい、と話す。
2歳から本を読み、幼稚園から大人と話すほうが楽しかった少女。人間に魅了されながら、同じ解像度で語り合える相手にはなかなか出会えないまま、上智で古典を読み、メガバンクで資産を評価し、そして37歳になった。
神童と呼ばれた子の行き先は、必ずしも学歴や称号のかたちを取らない。ときにそれは、幼少期からずっと抱えてきた孤独の、静かな裏返しとして現れる。
人が代替可能に見えてしまうと自嘲する彼女が、いま日々やっているのは、代替不可能な相手と出会うための仕事である。人とうまくつながれなかった少女がたどり着いた答えは、他の誰かが誰かとつながる場所をつくることだった。勝倉千尋という人の歩みは、そう静かに教えてくれる。


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