投稿にあたっては、乗客や社員の顔が写る場合にはモザイク処理を施すほか、貨物輸送に関する情報にも細心の注意を払う。そのうえで、「明るい話題を届けること」を目的に発信を続けているという。
興味深いのは、SNSが社員自身の意識に変化をもたらしたことだ。投稿ネタを探す過程で、社員が自社の魅力を探し、再発見するようになったのだ。SNSは単なる情報発信ツールではなく、自社の価値を見つめ直す機会にもなっている。
ファンづくりの先に見据えるもの
こうした取り組みは、鉄道ファンとの接点づくりにもつながっている。同社で保有するキハ205などの国鉄車両は、あくまで水島臨海鉄道を知ってもらうきっかけの1つだ。国鉄車両を通じて水島臨海鉄道そのものを好きになってもらいたいという思いがある。
また、同社の経営を支える事業の1つである貨物事業においても認知度を向上させたいという狙いがある。水島臨海鉄道の貨物事業は水島コンビナートの企業活動を支え、1日3往復の貨物列車を運行している。しかし、コンテナの中にどんなものが入っているのか一般の人が目にする機会はなく、その役割は十分に知られているとは言い難い。
大森さんは「貨物列車は日常生活に関わる様々な製品や原材料を運んでいる。その輸送力の大きさや役割について、多くの人に知ってもらいたい」と話す。
そのために、イベントではコンテナの展示や貨物を運ぶ機関車の展示を行い、子供から大人まで水島臨海鉄道という会社の存在や貨物輸送の役割を知ってもらおうとしている。
コロナ禍をきっかけに、水島臨海鉄道は沿線外のファンとのつながりを強化してきた。旅客輸送と貨物輸送という本業を維持しながら関係人口を広げる同社の取り組みは、地方鉄道が沿線外との関係を築く1つのモデルとなりそうだ。

