[Book Review 今週のラインナップ]
・『「ノーマル」の誕生 「普通の人」という幻想はいかに作り出されたか』
・『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』
・『経済の現場から統計データで見る インフレ日本の安い賃金』
評者・医療社会学者 渡部沙織
私たちは「ノーマル」か? 社会を支配してきた概念の歴史
普通、標準、正常──。私たちは日常の中でほぼ無意識に「ノーマル」を価値判断の基準としている。心身の医療史の研究者である著者のチェイニーは、この概念が近代以降の社会を支配するようになった歴史を描く。
人の身体や健康について私たちが「普通」だと信じることの多くは、WEIRD(西洋、高教育水準、工業化、裕福、民主的)に分類される、ごく一部の人々のデータに基づいている。WEIRDは世界人口の12%未満だが、医学研究被験者の80%を占める。
もともとnormalは直角や垂直を意味する用語だった。ところが19世紀以降、統計学の発展を背景に人間の身体や知能、精神、性、感情、子どもの発達までが測定され、平均や標準からの距離によって評価されるようになった。
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