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キャリア・教育

「ああ、東大を出てもこれか」——東大卒・外資系投資銀行で年収1100万円の男性を"刺しゅう屋"へ導いた「人間を忘れた夏」

6分で読める
「東大卒・年収1100万」の仕事を辞め、刺しゅうを始めた男性の物語です(写真:「北区の刺しゅう屋」Webサイトより)
  • 田中 優輝 Take Risk代表・「北区の刺しゅう屋」運営

INDEX

東大出身、外資系投資銀行に就職して、年収1100万円——。それだけを聞けば“勝ち組”と思われるような人生を、田中優輝さんは歩んでいました。しかし外銀での仕事は「速く、正確に、間違えず」に処理することが重視され、神経をすり減らす日々でした。

やがて退職し、刺しゅう屋を始める田中さんの歩みと挑戦を、著書『東大卒、年収1100万をやめて刺しゅうをはじめたワケ 冷めたまま働きつづける前に』より一部を抜粋し、2回にわたってご紹介します。本記事は1回目です。

人間を忘れた夏

2023年の夏が、いつ終わったのか、私はあまり覚えていません。朝起きる。スマホでメールを見る。タクシーに乗る。会社に着く。デスクに座る。画面を見る。昼を急いで食べる。また画面を見る。夜中に帰る。シャワーを浴びる。寝る。また朝になる。外を歩いていない月が、何カ月も続きました。

桜が咲いたのか。紫陽花が咲いたのか。セミが鳴いていたのか。夜風が涼しくなったのか。よくわかりません。私が毎日見ていた色は、だいたい決まっていました。オフィスのカーペットの灰色。モニターのグレー。エクセルの青。深夜のビルの窓。タクシーの座席。

徹夜は、ありました。仮眠も取らず、40時間ぶっ通しに近い集中をする日もありました。夜10時に出社して、次の日の午前11時まで案件を進め、そこから別の案件に移り、またその日の夜中まで続く毎日に色はありませんでした。締切の時間は刻んでも、季節は刻めませんでした。

真夜中2時、タクシーで帰る日が続いた(写真:『東大卒、年収1100万をやめて刺しゅうをはじめたワケ 冷めたまま働きつづける前に』より)
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