このイベントは好評で、北川さんは翌年も「隔離する宿の家」という住宅を舞台とするインスタレーションを行った。宿泊者と関わり続けながらのイベント運営は難しいものの、これらを契機に民泊という仕組みに関心を持った北川さんは、2年半前に自宅近くの空き家を使い、民泊を始めた。
「日本に長期滞在している海外アーティストにアドバイスをもらい、こだわって古民家を改修して始めたところ人気になりました。数万円の家賃で借りているものが一棟1泊で3万円ほどで借りてもらえるので、毎月、利益が出ます。
しかも、5泊以上と長期で滞在してくれる海外のゲストの多くは建築家、クリエイター、アートセンターのディレクター、都市計画家、ジャーナリストなどクリエイティブな目的を持った人々。アーティストの活動に共感する人たちが滞在してくれていたのです。
これはやばい仕組みだ!と思うのと同時に、この仕組みをアートの新しい循環のエネルギーにできるのではないかと直感しました」(北川さん)
「この街でアートのエコシステムを作ろう」
ちょうどその頃、京島ではインドネシアの現代アーティスト・コレクティブが運営するプラットフォーム「グッドスクール(Gudskul)との交流が始まっていた。
これは、2022年の国際展「ドクメンタ15」で芸術監督を務めたコレクティブ「ルアンルパ(ruangrupa)」などがジャカルタで立ち上げた共同の学びの場だ。知識や資源を共有して相互に助け合う思想や、地域と深くつながる活動は世界的に高く評価されている。
「そのメンバーが京島にやってきた時に『この街でアートのエコシステムを作ろう』と投げかけてくれました。一般的な民泊は出資した資本家が利益を取得し、それを再投資してさらに資本を膨らませていくもの。それを民泊が生み出す原資をアートや地域に還元する仕組みに変え、資本の循環エンジンを文化の領域に組み込む形に変えられないか?と考え、仲間を募って始めたプロジェクトがTANOMOCO(たのもし小槌)です」(北川さん)
具体的な仕組みとしては活動に関心を持ってくれたアーティスト、建築家やシニア、芸術支援の活動をしてきた人その他10人ほどがメンバーとなり、お金、時間を持ち寄ってミーティングに参加、改装を手伝って空き家を宿に改修。それを運用することで収益を上げ、それを地元のアーティストなどにマイクロ支援していくという。

