昨今の社会において、闇バイトや匿名・流動型犯罪グループがキーワードになる犯罪が大きな社会問題になっている。その被害報道は絶えず、若者たちが巻き込まれたり、主体的に関わったりする現代社会のあり方にも疑問符が投げかけられている。
そんな社会への警鐘でもあり、あらゆる大人たちへのメッセージが込められているのが、数々の賞を受賞する作家・月村了衛氏の小説『半暮刻』だ。現代社会の闇を生々しく描く社会派犯罪小説として注目を集める。
本書は、半グレたちの社会の実態および若い女性を借金漬けにして風俗に沈める具体的な犯罪手口と、大手企業が政治や反社会的勢力とつながって利権に絡む構造を、対照的な生い立ちの2人の青年の人生を通して、2部構成で描く。
そこには、ヒリつかせるような若者のリアルがあり、現代社会の強者のおごりと弱者の痛みが鮮烈に映し出される。月村氏に現実の犯罪社会へ切り込む意図と本作に込める思いを聞いた。
女性を風俗に斡旋した大学生の実際の事件が題材
ーー本書の企画経緯を教えてください。なぜこのテーマを選び、このような物語にしたのでしょうか。
アイデアの基になったのは、同志社大学など有名大の学生を含む半グレのホストグループが、女性に借金を負わせて風俗店に斡旋していた2010年代後半の事件です。
そのドキュメンタリーを観たんですけど、犯人グループの1人の学生は不起訴になるか逮捕を免れたのでしょう、番組のインタビューに応じ「社会勉強ができた」「これを糧にして社会生活に活かしていきたい」と話し、大手企業に就職しています。彼の頭のなかに、被害女性に対する罪悪感や謝意は微塵もなく、自分の成長につながる気づきや学びを得たと本気で言っているわけです。
まさに邪悪としか言いようのないものを感じました。われわれ一般社会の理解を絶している。そういうメンタリティの人間はどう生まれてくるのかと考えているうちに、実は人間が本来、根源的に持っているのではないかと思い当たりました。

