それをすぐにプロットにしたんです。2人の男の対照的な人生を通して描けば、効果的に伝えられると考えました。ところが、プロットは完成しましたが、何かが足りないと感じ、どうにも着手できずにいました。それで改めて編集者と打ち合わせをするうちに、もうひとつの核になるコンセプトが浮かびました。
それが、現代版の『罪と罰』です。この作品を通してそれを描くことができれば、2人の主人公それぞれに託したものが明瞭になると気づきました。そのコンセプトを得て着手しています。
ーー何かが足りないという感覚は、漠然としたものだったのでしょうか。
物語の構成はできていました。ただ、そこに自分の心を強烈に駆動させるモチベーションが足りなかったんです。そのためのテーマを掘り下げる切り口というか、着眼点を明確に見出せずにいたという感覚です。
ーー2部構成の物語のうち、第1部は前述の事件を題材にしていることがわかります。一方、第2部は大手広告代理店の実態を掘り下げる話になり、その事件とは無関係です。
これも原点は同じ。事件を起こしながら、大手の一流企業に就職した学生がいるわけです。そんな人間が社会人としてどう生きるかを描くときに、大手広告代理店は伝わりやすい。そこから出発して物語を組み立てていきました。
半グレや裏社会、広告代理店、政治家のリアルをそのまま描く
ーー本書では、半グレ社会の組織構造や彼らのメンタリティのほか、広告代理店のビジネスの裏側がリアリティを伴って詳細に綴られています。どのような取材をされたのでしょうか。
半グレや反社会勢力などの裏社会に関しては、以前から小説で取り上げていますので、これまでの経験値があり、取材資料も山積みです。一方、広告代理店のほうは、今回初めて調べてみて、これは相当にヤバいと危機感を覚えたくらいです。また担当編集がいろいろ当たってくれて、ダイレクトな証言を多く得ることができました。
現役の広告代理店社員、都庁職員といった方々が言わば内部告発として取材に応じてくれました。みなさん匿名を条件に話してくださいました。そういう意味では、十分に気を使いながら執筆を進めています。

