ソフトバンクはAI開発側にデータを売る
許諾を得たコンテンツだけを使い、使われた量に応じて権利者に対価を戻す。この設計を、正反対の出口で実装したのがソフトバンクだ。7月22日にベータ版を始めたデータエコシステム基盤「GaranAI(ガランエーアイ)」は、新聞社などから預かったデータを加工し、AI開発事業者に有償で提供する。一般利用者は対象にしていない。
買い手がつくのは、AIは学習した時点までの知識しか持たないからだ。新しい出来事に答えさせるには、モデルを学習し直すか、回答のたびに外部のデータを参照させるしかない。日々記事が積み上がる新聞社は、その供給源になる。
国産モデルの性能を上げるにも膨大な日本語データが要る。ところが、広告収入をもたらさないAIの巡回を嫌い、記事の自動収集を拒む設定を入れるサイトが増えた。読者には開いたままでも、AIから見た入り口は狭まっていく。行き場を失った需要が、新聞社や出版社の抱えるデータに向かった。
預かったデータはそのまま渡さない。元データの事実関係を保ったまま表現を変えた「派生データ」を作り、そこから目的別の「加工データ」を枝分かれさせる。ソフトバンク次世代サービス基盤本部データエコシステム開発室室長の佐藤敏紀氏によれば、AI開発に必要な事実は残しつつ、学習したAIが元の記事をそのまま回答として返すのを防ぐ狙いがある。
佐藤氏は、権利を守ることは重要だとしたうえで、「提訴が頻発すれば誰も怖くてAIを作れなくなる」と述べた。訴える以外の選択肢を用意する、という位置づけになる。ただし主導権は預けた側に残り、提供先を選ぶことも、競合他社には渡さないと決めることもできる。
対象は既に電子化された記事にとどまらない。佐藤氏は、紙やマイクロフィルムのまま残る資料についても、ソフトバンク側で電子化から手がける考えを示した。遡る範囲として想定しているのは、少なくとも1970年代までだという。
GaranAIのベータ版は共同通信社、毎日新聞社、産業経済新聞社など8社が名前を出してデータを提供する。佐藤氏によれば、申し込みは30社以上に達しているという。正式提供は2027年1月以降を目指す。
出版社や新聞社にとって、BuffmeeとGaranAIはどちらか一方を選ぶものではない。共同通信と産経新聞は、Buffmeeのラインアップに名を連ねると同時に、GaranAIにもデータを提供する。同じ記事が、消費者と対話するアプリと、AI開発事業者が買う学習データの両方に流れていく。


※ログイン後、コメント入力が可能です。