こうした厭戦ムードは、プーチン政権内にもじわじわと広がっている。肝心のベロウソフ国防相自身が継戦に消極的といわれる。
しかし、プーチン自身は侵攻を続ける構えを崩していない。戦死者数が新規の志願契約兵数を上回る事態が続くロシア軍の兵力不足は明らかだ。このため、クレムリンは公式に発表していないものの、侵攻後、初の議会選挙となる9月の下院選後に大規模な追加動員に踏み切るとの見方が根強い。
22年9月に行われた第1次の動員数は、約30万人だったが、今回は最大で50万人規模になる可能性が指摘されている。現在、戦場に投入されているロシア軍の兵力は約72万人と言われている。このため、追加動員が実際に実施された場合、ロシア軍にとって、兵力増による戦力強化の効果は一定程度出るだろう。
ロシアの追加動員の弱点とは?
しかし、それが戦況をロシア軍優位に一変させるかと言うと、可能性は低いと筆者はみる。
その理由はいくつかあるが、1つ目は、ウクライナ軍がドローン攻撃の多用で起こした戦争の変容だ。現在、最前線まで20〜30キロの幅のいわゆる「キルゾーン」では、ロシア兵の80%がウクライナ軍によるドローン攻撃で死亡していると言われる。つまり、最前線に到達すらできていないのだ。
追加動員でいくら兵力規模を増やしても、最前線での兵力増は限定的で、上空からのドローン攻撃で戦死傷者を増やすだけとなる可能性が高い。
第2に、動員兵を戦場に投入するには、それなりの軍事訓練が必要だが、訓練を行う下士官クラスがロシア軍内で大幅に足りていないことが挙げられる。このため、満足な訓練を受けず、練度が低い現在の契約志願兵以上に、動員兵の練度が低くなる事態もありうる。いずれにしても、追加動員が戦況に与える当初の影響は年末までに出てくるだろう。
中朝ロの連携に日本は注意せよ
一方で筆者が気になるのは、北朝鮮からのロシアへの追加派兵の動きだ。ゼレンスキーは7月末、ロシアが北朝鮮に3万人の追加派兵を求めており、6月から受け入れ準備を進めていると主張した。北朝鮮が複数の弾道ミサイルの発射台をロシアに供与する準備をしているとも述べた。
24年8月以降、北朝鮮は1万数千人の兵士をロシアに派遣している。結果的に、これまでの北朝鮮軍の派兵が戦局全体に大きく影響したとは言えない。しかし、軍民両用部品の提供など中国によるロシアへの事実上の軍事支援の動きに変化が生じるか否かも含め、中朝両国の動きは要注意だ。
こうした中、7月半ばに中ロの両国海軍艦船計4隻が沖ノ鳥島(東京都)の南西を航行し、このうち中国のミサイル駆逐艦1隻が日本の排他的経済水域(EEZ)内で機関銃の射撃訓練を実施した。明らかに中ロは日本に対し、軍事的威圧を強める構えだ。中ロの軍事協力の行方について、日本は一層の警戒と監視を強めるべきだ。

