映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が、公開直後から大きな反響を呼んでいる。ナガノがSNSで描き始めた漫画「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」(通称「ちいかわ」)は、アニメ化などをきっかけに人気に火がつき、いまや子どもから中高年まで幅広い層を巻き込む存在となった。
街には関連グッズがあふれ、専門店や期間限定ショップには大勢の人が詰めかけ、キャラクターグッズが次々と売れていく。その人気は、もはや一時的なキャラクターブームという段階を超えて、日本を代表するコンテンツの1つに成長しつつある。
「ちいかわ」が人気である最大の理由は、もちろんキャラクターがかわいいからだ。丸みを帯びた小さな体、大きな目、単純でありながら一目で見分けられる造形。ちいかわ、ハチワレ、うさぎをはじめとするキャラクターには、それぞれ異なる性格があり、表情や動きにも愛嬌がある。眺めているだけで気持ちがやわらぎ、身近に置いておきたくなる。キャラクタービジネスとして成功している根底には、まず圧倒的なデザインの強さがある。
かわいいだけではない魅力
しかし、「ちいかわ」の人気をかわいさだけで説明することもできない。かわいいキャラクターは世の中に無数に存在する。その中で「ちいかわ」がここまで多くの人を魅了しているのは、 外見とは別の魅力もあるからだ。
「ちいかわ」は、最初から子ども向けに企画された作品ではない。ブームの出発点となったのはSNSであり、日常的にSNSを見る大人たちが作品を発見し、共有し、人気を広げていった。もちろん、子どもでも楽しめる絵柄であり、特にアニメ化以降は子どものファンも増えた。しかし、最初に作品の不思議な魅力を見抜き、それを支持した中心層は大人だった。
大人の読者が反応したのは、そこに単なるかわいらしさだけではない、奇妙さや不穏さ、説明しがたい面白さがあったからだ。「ちいかわ」の物語や世界観を、短い言葉で説明するのは意外に難しい。小さくてかわいい生き物たちが暮らし、食べ物を喜び、友達と遊び、ときには働いたり、怪物を討伐したりする。しかし、それだけではこの作品を説明したことにはならない。

