この防衛省の事案を踏まえ、三重県が庁内のUSBメモリ1万757個を調査したところ、47個からマルウェアが検知されました。検知されたマルウェアはいずれも活動しておらず、感染や被害はなかったとされていますが、外部端末での使用時に混入したものも確認されています。
総務省も、自治体におけるUSBメモリ等の利用実態を把握するための調査を進めています。つまり多くの組織では、USBメモリの利用実態が十分に把握できていなかった可能性があるのです。
クラウド時代でもUSBがなくならない理由
しかし、なぜクラウドやオンラインストレージが普及しているのに、USBメモリのインシデントが後を絶たないのでしょうか。
まず、USBメモリは、今も広く使われ続けています。インターネットから切り離された工場の制御システム、外部に出せない研究データを扱う研究所、閉域ネットワークで運用される自治体や医療機関では、データを運ぶ手段としてUSBメモリに依存せざるを得ない場合があります。ネットワークから切り離している環境であっても、データの出し入れにUSBメモリを使う限り、その環境は完全には閉じていません。
これは、閉域ネットワークを持つ組織だけの問題ではありません。スマートフォンで撮影した写真や動画を社内資料で使いたいとき、大容量ファイルを安全に共有する手段がなければ、手元のUSBメモリや私物のストレージに頼ってしまうことがあります。少額の機器であれば、会社の備品として管理されず、個人が購入して立替経費で精算する形で業務に使われることもあるでしょう。
同じ構図は、業務での生成AI利用にも当てはまります。正規のツールを使うまでに、費用対効果の説明、セキュリティ確認、承認、決裁といった手続きが重ければ、個人で契約しているサービスを使ったほうが早いと考える人が出ても不思議ではありません。業務上の必要に対して、安全で使いやすい正規の選択肢を用意できるかどうかが、例外運用を防ぐ分かれ目になります。

