実際、22年以降、パソコンやスマホ向けの需要が低迷し、NAND価格が急落。キオクシアは5四半期連続の営業赤字に陥り、24年3月期には過去最大の赤字額を計上した。
この経験は、メモリー各社にとって需要動向を慎重に見極めながら設備投資を行う必要性を改めて示した。しかし、自社が慎重に投資しても、競争相手が大規模な増産に踏み切れば、業界全体として供給過剰になる危険は避けられない。
キオクシアの株価急落が物語る現実
キオクシアは、22年から23年にかけての深刻な市況悪化を経験し、需要動向を見ながら段階的に生産能力を拡大する必要性を強く認識するようになったとされる。しかし、キオクシアが慎重に設備投資を行っても、競合が大規模な増産を行えば、業界全体として供給過剰になる危険は避けられない。
つまり、一企業の合理的な経営判断だけでは、メモリー価格の暴落を防ぐことはできないのである。今後、株価が本格的に回復するのか、それとも調整がさらに続くのかは、現時点ではわからない。
この問題は、キオクシアという一企業だけの問題ではない。AIブームが起こっても、半導体メモリー産業に固有の市況循環がなくなるわけではないことを示している。
需要を過小評価すれば成長機会を逃す。逆に、需要を楽観視して巨額の設備投資を行えば、供給過剰によって自ら製品価格を押し下げかねない。そして、技術開発を続けながら、数年先の需要と競争相手の投資行動を予測しなければならない。
キオクシアの劇的な復活とその直後に起きた株価急落は、AI時代になっても半導体メモリー企業の経営が極めて難しいものであることを示している。

