最後のツールが、「ロシア化」を進めるパスポート化である。ロシアは国籍取得要件を簡素化し、他国内、特に未承認国家(事実上の独立状態にある地域)でロシアパスポートを大量に配る作戦に出る。
これによりロシア人がいるという既成事実を作り、時期を見計らって「ロシア人保護」という名目で軍事介入や政治介入をする戦術をとってきた。
決定的なのは「安全保障(軍事)」「エネルギー」「同胞(パスポート化)」の3セットであり、それに政治的脅迫や経済的揺さぶりなどが相乗効果となって、ロシアの影響力工作を効果的に機能させているのである。
「自立コスト」の跳ね上がりと4つの選択
旧ソ連諸国の安全保障に対する感覚は、2014年のクリミア併合で大きく変わった。それまではロシアとある種のグレーゾーンを残した関係性で付き合えていたが、クリミア併合により各国の主権や体制への現実的な脅威として認識されるようになった。
曖昧な戦略が取りづらくなり、周辺国から見ると「自立コスト」が跳ね上がることになったのである。
各国がどのような選択をするかは、置かれている5つの条件に大きく左右される。
第二に、エネルギーと交易の「自立度と依存度」。
第三に、国を弱体化させロシアに付け込まれやすくなる「紛争や戦争の有無」。
第四に、国内の不安定要因となる「ロシア系住民の比率」。
第五に、親欧米で進めるという決意の固さを示す「政治的方向性」である。
これらの条件や状況を踏まえ、旧ソ連諸国の政治決断は主に4つのタイプに分かれる。
タイプ1は「離反型」。バルト三国のように迷うことなくロシアに背を向け、西側諸国との関係を強化した国だ。
タイプ2は「バランス型」。カザフスタンのように、ロシアの影響を受けながらも西側にも目を向け、現実的な多角化を実現しようとする国である。
タイプ3は「依存型」。ベラルーシのようにロシアの支配下に置かれることを受け入れている国だ。
タイプ4は「中立型」。トルクメニスタンのように、永世中立国に近いあり方を選択している国である。

